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特別対談 香山リカ×佐藤杏樹&西潟茉莉奈(NGT48)

2016年03月09日 公開
2023年05月16日 更新

NGT48のお仕事で大切なこと教えてください!

変わりたいなら「仮面」をかぶればいい

競争が厳しいだけではない。ネット経由で情報が広がりやすくなったこと、ファンとの直接の接点が増えて身近な存在になったことで、アイドルという仕事の難しさが増している面もあるようだ。

香山 普段、なかなかアイドルの方とお会いすることがないのでお聞きしたいのですが、気になるのがオンとオフの区別。今は「○○がうちの店に来てたよ」なんてすぐにツイートされてしまうし、昔のように「仕事が終わったらプライベート」と区切ることができないんじゃないかと思うんです。「普通の女の子に戻りたい」とか、「一人の中学生に戻りたい」とか思うことはないんですか?

佐藤 やはり、NGT48に入って生活がガラッと変わりました。今まで通りに生活することはできなくて、気軽に友達とどこかに遊びに行ったりすることもあまりできなくなったので。最初の頃は「ちょっときついな」と思ったんですけど、何カ月かたつうちにそれが普通になってきています。

香山 プライベートなのに、急に「握手してください」とか言われたらいやだなー、とか思わないですか?

佐藤 それは思わないです。「自分を知ってくれていて嬉しい」と思います。

西潟 そうですね。逆に嬉しいです。

香山 そうなんだ。先輩たちもそうなの? オフにどこに出かけても、「○○ちゃんだ」ってわかっちゃうという生活でしょう?

西潟 北原キャプテンとか柏木さんくらいになると、それが当たり前になってくるからまた違うかもしれません。でも、NGT48の多くのメンバーはアイドルになったばかりで、普通の学生、普通の女の子たちなので。それがガラッと変わって、ある意味チヤホヤされるというか……(笑)、そういう楽しい感じの時期だからなのかもしれないのですけど。

香山 ああ、わかります。それはずっと続きそうですか? 想像してみて。すごく有名になって、「どこに行っても気づかれるのは嫌だ」と思うようになる時期が来るのかしら。

西潟 どうでしょうか。うーん……でも、私は握手会などのイベントがすごく好きです。だから、そういう時期は来ない気がしています。

佐藤 私も、今の段階では全然そういうのはないですね。

香山 握手会が好きというのは、ファンと直接コミュニケーションが取れるから?

西潟 そうです。何かあれば報告してくれたり、「ここがよかったよ」って褒めてくれたり。

佐藤 ファンの方との会話を通じて、トーク力とか、コミュニケーション能力もアップすると思いますし。

香山 前向きで素晴らしいです。ところで、西潟さんは学校で心理学の授業を受けたんですよね。面白いと思いましたか?

西潟 はい。もともと人の悩みを聞くことが好きでしたし、人の役に立ちたいと思っていたので、カウンセラーになりたいなと思ったこともあって。

香山 そうですか。学校でも友達に相談されることがあったり?

西潟 ありました。うまいことは全然言えないんですけど、でも理解しようとはしていましたね。

佐藤 がたねぇ(西潟さんのニックネーム)に相談すると、本当に落ち着きます。私、レッスンの時に足をぶつけて爪が取れたことがあって。もう指がなくなったかと思って(笑)、泣きわめいてたんです。その時に、がたねぇがずっと「大丈夫、大丈夫」って言いながらついていてくれたんですよ。私に血を見せないようにして。

西潟 血が出ていて、パニックになっちゃっててね。

香山 そういうときって、普通は20歳ぐらいの女性だったら自分もパニックになるでしょう。そうはならなかったんですか?

西潟 大丈夫でしたね。

香山 守ってあげなきゃって?

西潟 母性も出ているのかもしれないですね(笑)。

香山 西潟さんはグループの中では年が上の方なんでしょう? なんとなく役割みたいなものはできちゃうんですか。

西潟 そうですね。メンバーが家にお泊りにくるとご飯を作ったりしています。実際は兄がいるだけで、妹も弟もいないのですが。

香山 じゃあ、妹キャラだったけど、グループに入ったらいつのまにかお姉さんの役割が。

西潟 はい。ニックネームからして「がたねぇ」なので(笑)。

香山 でもね、そういうことってありますよ。そういうのを「仮面」という意味で「ペルソナ」と言うんだけど。
よく性格を変えるなんて言うけれど、本当に性格を変えることって難しい。でも、人間ってかぶっている仮面一つでけっこう変わることもあって。お姉さん役の仮面をかぶると、お姉さん役になれる。

西潟 仮面ですか。

香山 たとえば私は、病院だと白衣を着ています。でも、精神科ではメスで切ったりはしないので、ほとんど必要ないといえば必要ないんですよ。でも、白衣を着ることで「私は『医師』なんだ」と思える。ふだん友達と話していると、悩みを相談されても「わかんない」とか言っちゃうんですよ、意外に。

西潟・佐藤 (笑)

香山 でも、白衣を着るとたんに精神科医の先生っぽい振る舞いになる。

佐藤 切り替えですね。

香山 そう。白衣を脱いだだけで元に戻るんだからインチキって思うかもしれないけれども、ペルソナっていうのは意外に中身まで変えていってしまうものなんです。
だから、普通の中学生とか短大生だったのが、アイドルになって生活が大きく変わっても問題なくやれているというのは、うまくペルソナをかぶれているのかもしれませんね。
でも、それが長く続くと今度はペルソナのほうが大きくなりすぎてしまうこともありまあるので、プライベートな時間もキープしておいたほうがいいと思います。24時間アイドルの生活だと、「あれ、私って本当はなんなんだろう」って思う時がくるかもしれないので。タレントさんでも病んでしまう人がたまにいるでしょう。そんなに先のことを心配しても仕方がないかもしれないけど。

佐藤 私たちもちゃんとしないとダメですね。

西潟 仕事とプライベートと分けないと。

香山 だけど、皆さんの場合は本当に分けにくいですよね。昔のアイドルだったら、仕事が終わったらサングラスをしてプライベートということでよかったけれど。ほっとする時間はどんなときですか?

西潟 お風呂に入っているときです。

佐藤 私は自分の部屋に1人で、大音量のイヤホンで音楽を聴いているときです。本当に大音量なんですよ。

香山 何を聞くんですか?

佐藤 Jポップですね。共感できる歌詞の曲を、一人で、しかも大音量で、歌詞の意味を考えながら聴く。そうすると一番落ち着くんです。すがすがしい気持ちになれるんですよ。

香山 今だったら誰の曲が好き?

佐藤 元気がないときは西野カナさんの曲が多いです。西野カナさんって共感できる曲が多いと思うので……。

香山 でも、西野カナさんの曲は恋愛していないと共感できないんじゃない?(笑)

佐藤 それ以外にもあるんですよ、いろいろ(笑)。

香山 西潟さんは新潟で一人暮らしをしていて、東京のあれが恋しいな、と感じることはありますか?

西潟 お母さんの料理ですね。

佐藤 待っていても「ごはんだよ」って言われないもんね。一人暮らしだと。

西潟 寂しいです。「ただいま」って言っても誰も「おかえり」って言ってくれなくて。ネコも好きなのですが、いまは飼えないので。

 

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著者紹介

香山リカ(かやま・りか)

精神科医

1960年、北海道生まれ。東京医科大学卒業。精神科医、立教大学現代心理学部教授。豊富な臨床経験を活かして現代人の心の問題を鋭くとらえるだけでなく、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで発信を続ける。『しがみつかない生き方』(幻冬舎新書)など、ベストセラー著書多数。『香山リカのココロの美容液』(NHKラジオ第一)放送中。

佐藤杏樹(さとう・あんじゅ)

アイドル/NGT48

2001年、新潟県生まれ。15年、NGT48第1期オーディションに合格。チームNIIIに所属。特技はスノーボード。ニックネームは「あんじゅ」「シュガちゃん」。

西潟茉莉奈(にしがた・まりな)

アイドル/NGT48

1995年、東京都生まれ。2014~15年、バイトAKBとして活動。「第2回AKB48グループ ドラフト会議」において、NGT48に第1巡目で指名される。チームNIII所属。ニックネームは「がたねぇ」。

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