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娘を持つ母親が「夫に読ませたい!」と買っている本の中身とは?

2016年04月15日 公開
2022年06月07日 更新

清水克彦(文化放送プロデューサー)

男性向けの本なのに、購入者の約半数が女性!

 女の子がやさしく、賢く、そして幸せに育つために、父として何をすればいいのか? 娘を持つビジネスマンなら誰もが、異性の子供の育て方に悩むに違いない。そんな男性のアドバイスになればと、教育現場への豊富な取材経験を持ち、自身も女の子を育ててきた清水克彦氏が執筆したのが、『女の子が幸せに育つパパの習慣』である。

 ところが予想に反して、発売から1カ月間の販売データを見ると、なんと購入者の約半数が女性という展開に! 娘を持つ女性が、夫に読ませようと手に取っているようなのだ。

 母親が、父親に実践してほしいと思う「女の子の育て方」とは、どのようなものなのか? 同書の一部を紹介しよう。

 

女の子が幸せに育つキーワード……それは「パパ」

「男の子に比べ、女の子のほうが子育てが楽」
 よく耳にする言葉です。

 男の子はやんちゃで、後先を考えず、思いついたらパパやママの想定を超える行動に走りがちです。そのくせ自立が遅めで甘えん坊な部分があり、意外と風邪もひきやすかったりするのが男の子の多くに共通する部分ですが、それに比べ、女の子はおませで、何をするにも慎重で、察しがよく、パパやママのまねをしたがる傾向が強いという特徴があります。その違いが、
「女の子は男の子に比べて手がかからない」
 という感想につながるのではないかと思います。

 しかし、女の子を育てていくうえでは、女の子特有の難しさもあります。
 乳幼児期の間は、それほど性別差を意識せず子育てできますが、小学校に入学して以降の学童期や中学校に進学するあたりからの思春期になると、どうしても男の子と女の子では違いが顕著になってきます。
 学童期の女の子は、マイペースな男の子に比べ、周りを意識するようになります。周りの友だちと同じでなければ落ち着かなくなったり、学校での人間関係に悩むケースが多いのも女の子のほうです。
 思春期に入れば、友だちとの関係がより複雑化し、一方で、親子のコミュニケーションが不足がちになってきます。また、パパやママへの反抗心が芽生え、
「あーもう、ウザい。あっちへ行って」
 などと言うようになったりもします。

 ですから、子育ては、相手がたとえ女の子であっても、けっして楽とは言えないのですが、ママだけではなく、パパの力が加われば、女の子はいい方向に伸びていきます。
 女の子にとって、同性であるママは、ある意味、お手本であり、年が離れた姉のような存在であり、またライバルでもあります。それだけに、まねるところはまね、スルーするところは完全にスルーしたり、反発したりもします。
 一方、ママは、娘を自分の分身ととらえ、その成長に一喜一憂しがちです。なかには期待をかけすぎるあまり、過度にコントロールしようとして、流行語で言う「毒母」に近いパターンに陥るケースもあります。
 それが、異性のパパなら、ママとは違う存在として向き合うことができます。ママに比べれば触れ合う時間が短いパパは、女の子から見れば新鮮で、外の空気を家庭に運んでくれる存在として映ります。
 その話は興味を持って聴くことができ、パパとのたまの外出も貴重な機会として楽しみに感じるものです。
「女の子はえてしてパパ似の男の子を好きになる」
 などと言われるように、父娘関係が良好なら、パパから強い影響を受け、その生き方や考え方に共感するようになります。

 それでも、女の子が学童期から思春期に入る頃になると、しだいにパパと娘の距離が広がってきます。
 自分の部屋にこもりがちになる娘に勇気を持って話しかければ、「別に」や「それで?」のひと言で返され、
「パパの下着と私のを一緒に洗わないで」
 こんな言葉に、「いつからこうなってしまったのか」と嘆くパパも多いはずです。
 しかし、世間一般に反抗期として認知されている第二反抗期(思春期の中学生時代前後)に突入するまでの父娘関係しだいで、これらはとても軽微なものに変わります。
 また、仮に反抗期になってしまったとしても、そこでひるんではいけません。
 良好な関係が続いている幼い頃であれ、関係がぎくしゃくし始めた学童期から思春期であれ、パパの役割は、女の子の機嫌をとり、すり寄っていくことではありません。
「心のやさしい子に育ち、周囲の人から愛され、好きな人と結婚をし、幸せな人生を歩んでほしい」
 との思いを胸に、父親としての姿勢はきちんと見せるようにすべきです。

 加えて現代は、テレビや新聞などで「女性活躍」や「一億総活躍」の文字が躍る時代です。それらへの賛否はさておき、官民あげて子育て支援制度の充実が急がれ、育児中の女性でも仕事を継続できる環境がしだいに整いつつあります。
 そうなりますと、これからは女の子にも、将来の仕事と育児の両立を見越して、「自分で自分のキャリアを開拓していく力」が求められるようになりますから、
「女の子なのだから、勉強はほどほどでいい」
 という考え方では通用しなくなってきます。
 やさしさだけでなく、たくましさや頭のよさも必要になってくるからです。もちろん、幸せの定義はさまざまですが、こうした能力を磨くことは、その子自身の生きる力を培うことはあっても、幸せを損ねることはないはずです。それだけにパパの役割はより重要になってきます。

 そこで本書です。本書では、「これからどのように娘と向き合えばいいのか」というパパの問いに、次の3つにポイントを置いてお答えしていきます。

○特別なことは必要ない、ひたすら愛情を注ごう
○ただ、パパはそれぞれが持っている個性や価値観を前面に出そう
○子育てを社会との関わりのなかで考えよう

 本編では、これら3つをベースに、60の項目にわけて、パパが娘と関わるコツについて、あますところなくお伝えしていきたいと思います。
 それも、「きょうから」「誰でも」「ノーコスト(もしくはローコスト)」で始められることばかりです。

 私は、在京ラジオ局で教育問題を取材し、家庭教育の現状や受験事情などについて調査研究し、執筆活動や各地の小中学校で講演をしたりしている人間です。
 しかし、家に帰れば、皆さんと同じように多感な年頃の娘を持ち、「どう育てていけばいいか」と悩んでいる1人のパパです。
 本書を通じ、女の子を、心やさしく賢い人間、そして幸せな人生を送ることができる人間へと育てていくために、パパとして何ができるのかを一緒に考えていけたら、と思っています。

 

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著者紹介

清水克彦(しみず・かつひこ)

文化放送プロデューサー

1962年、愛媛県生まれ。早稲田大学大学院公共経営学研究科修了。京都大学大学院法学研究科博士後期課程在学中。大学卒業後、文化放送入社。政治記者を経て米日財団フェローとしてアメリカ留学。帰国後、首相官邸キャップ、報道キャスター、情報ワイド番組プロデューサーなどを歴任。江戸川大学や育英短期大学で非常勤講師を務める。現在は報道デスクとして番組制作やニュース解説に従事するかたわら、政治と教育問題を取材し、執筆や講演にも力を注ぐ。著書は、ベストセラー『頭のいい子が育つパパの習慣』『頭のいい子が育つ10歳からの習慣』(以上、PHP文庫)をはじめ、『子どもの才能を伸ばすママとパパの習慣』(講談社)、『中学受験――合格するパパの技術』(朝日新書)、『安倍政権の罠』(平凡社新書)、『ラジオ記者、走る』(新潮新書)ほか多数。公式サイト http://k-shimizu.org/

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