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話題の家電ベンチャー起業家の「ストレス源をかわす処世術」

2016年05月10日 公開
2016年07月21日 更新

中澤優子(UPQ代表取締役CEO)

 

 

本当につらいのは「仕事がなくなったとき」

もともと、「先行き不透明」な状況に対して、恐れを感じない性格なのだという。

「仕事では、成功の保証がないのが当たり前。そこは努力や試行錯誤をしながら、乗り越えていけます。
本当に辛いのは、『仕事しなくていい』と言われることではないでしょうか。不透明どころか、先がないということですから」

実際に、その状況に立ったことがある。カシオが携帯電話事業からの撤退を決めたときのことだ。

「『お先真っ暗』とはこういうことなのだ、と思いました。明日からものづくりができない、一緒に頑張ってきた仲間とも離れ離れになる。そう思うと、さすがに落ち込みました」

しかし、落胆したままではいなかった。退職後、中澤氏は新たなチャレンジを始める。

「かつての仲間や、仕事を頑張る多くの人々のための居場所を作ろうと思いました。おしゃべりしたり、ホッと一息ついたり、アイデアを出し合ったりできる場所を提供したい。そこで考えついたのが、カフェの経営です」

1年後、秋葉原にカフェをオープン。立ち上げ当初は、非常な激務でさすがに大変だった、と振り返る。

「土日も祝日もナシ、毎日朝方まで仕込み作業。夜中にパンケーキの粉をこねながら、『私は何をやっているんだろう?』と思うこともありました。でも、ここも『永遠に続くわけではない』と考えて乗り切りました。実際、数カ月経つと要領がつかめてきて、ぐっと楽になりました。その時々は大変だと感じても、なんとかなるものですね」

この「なんとかなる」の精神が行動力の源にもなっている。

「難しいと言われることでも、すぐ着手してしまうのが常です。開業前も、『一千万の資金と十分な準備期間が必要』とネットにかかれていたことを鵜呑みにせず、その理由を洗い出してみました。すると、少しの工夫で解決できることだとわかったので、わずかな元手で始めてしまいました。
動かないでフラストレーションを募らせるよりも、まずは動いて、そのつど問題解決。それが私にとっての、ストレスをためない方法と言えそうです」

 

「プライド」や「保身」を優先していないか?

UPQの設立後も、この姿勢は一貫している。

「設立以来、ピンチやトラブルはつきもの。予定通りに事が進まないことも多々あります。船便で届くはずの新商品が台風で遅れ、海上なので連絡もつかない、といったスリリングな経験もしました」

普通なら慌ててパニックになりそうな状況だが、そこで動じないのが中澤氏の強さだ。

「こんなときは、『ならば、どうする』と、次の手を考えます。通関の手続きを延期したり、トラック輸送のスケジュールを変更したり、できることは色々あります。策を考えることに集中すれば、動揺することはありません。
ちなみに、これは平常時も同じです。お客様の反応を見て課題解決を図り、新たな働きかけをする。その場その場で最善策を考え、絶えず実践しています。常にその感覚を働かせていれば、ピンチのときも落ち着いて対処できます」

加えて、自身がストレスに強い理由をもう一つ挙げる。

「『失敗したら、経歴に傷がつくかも』『こんなことを言えば、嫌われるかも』といったことを、私はほとんど気にしません。ものづくりが好き、という動機だけで働いているので、そのあたりは至って呑気なのです。

ストレスに苦しんでいる方々も、一度、自分の中にあるプライドや保身の気持ちを見直してみると、何かが変わるかもしれません。こだわっていたものが、実は大して重要ではなかったと気づけば、きっと心が軽くなるでしょう」

 

<『THE21』2016年6月号より>

著者紹介

中澤優子(なかざわ・ゆうこ)

株式会社UPQ代表取締役CEO

1984年、東京都生まれ。2007年、中央大学経済学部卒業後、カシオ計算機に入社。携帯電話の開発に携わるが、12年、同社の携帯電話事業撤退に伴い退職。カフェを開業する傍ら、家電メーカーの立ち上げに着手。15年に㈱UPQを設立。企画から2カ月、創業後わずかひと月ほどで17種24製品を発表、家電業界の革命児として注目を集めている。

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