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一瞬で誰でもできる、「人の心を動かす」文章の作り方

2016年05月18日 公開
2023年05月16日 更新

木暮太一(教育コミュニケーション協会代表理事)

「香りつきのマスカラ」のキャッチコピー、どうつける?

しかし、僕が実践している方法で考えれば、誰でも簡単に、自分の言葉で表現できるようになります。
「自分の言葉で表現」すると、自分も相手もお互いにテンションが上がって、「それ面白い」と言ってもらえるのです。

これは、頭の中のどこにフォーカスするか、の問題なので、技術や地頭は要りません。
僕は小学校で作文の指導をしていますが、小学生でも簡単にできる方法です。

そのキーワードとは、「教えたいこと」。
そして、「事実」よりも先に「感情」にフォーカスすること。

たとえば、映画を観て、「すごく面白いので、誰かに勧めたい」と思ったとき。
映画の「感想」ではなく、その映画をまだ観ていない人に「教えたい」という部分は何か?と考えるのです。

このメソッドを使って、ある化粧品会社で研修をしたときの例をご紹介しましょう。
そのとき、ある女性社員の方が、「香りつきのマスカラ」のPRで悩んでいました(最近は、マスカラにも香りがついているらしいですね。まったく知りませんでした 笑)。
最初に作ったキャッチコピーは、
「瞬きするたびにウキウキ気分に。ラベンダーの香りが4時間持続」
というもの。

「香りつきのマスカラなんだな」ということは伝わりますが、どこか借りてきた言葉のようです。
そこで僕は、担当者の女性に、こう尋ねました。
「この商品について友達に教えるとしたら、何を教えたいですか?」

すると彼女は、10秒間ほど考えたのち、こう言いました。
「これを使えば、合コンの二次会で、接近戦に持ち込める!」

つまり、「香りつきのマスカラ」なんて男性は普通知りませんから、
「これ、香りつきなんだ」と言えば興味を持って顔を近づけてくる。
そこから接近戦に持ち込める!……というわけです。

こっちのコピーがついていたほうが、断然、インパクトがありますよね。
こういう言葉が自然に出てくるのが「教えたいこと」というキーワードなのです。

作文が苦手な子でも、一瞬でスラスラ書けるようになる

また、「事実よりも感情にフォーカスする」というのは、小学生の書く作文を思い浮かべてみていただけると、イメージしやすいと思います。

先述した小学生向けの作文の授業でも、僕はこの方法を子供たちに教えています。
普段、学校の作文の指導では、「5W1Hでまとめる」ように指導されることが多いようです。
この方法は決して間違っているわけではないのですが、これに従って作文を書くと、たとえばこんなふうになります。
「今日、昼休みに、校庭で、○○ちゃんと一緒にボール遊びをしました。楽しかったです」

文章としては整っているのですが、イマイチ本人の言いたいことが伝わらないと思いませんか?
それは、「5W1H」という「事実」にまずフォーカスしているために、「感情」が置いてきぼりになってしまっているからです。事実を整理することに終始してしまい、肝心の「感情」は「楽しかったです」と、とってつけたような感想だけになってしまう。

僕のやり方は逆で、まず「感情」にフォーカスします。
何が面白かったか? 何にテンションが上がったか?
お父さんやお母さんに、今日のできごとの何を「教えたい」か?
まずはそれを思い出し、そのあとで、5W1Hを組み立てていきます。
すると、どんなに国語が苦手な子でも、一瞬で「教えたい」ことを作文にできるようになるのです。

新刊『「自分の言葉」で人を動かす』では、ここで紹介した僕の話す&書くときのノウハウを、わかりやすくまとめました。
詳しく知りたい方はぜひ、お手に取ってみてください!

 

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木暮太一著
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著者紹介

木暮太一(こぐれ・たいち)

一般社団法人教育コミュニケーション協会代表理事

1977年、千葉県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートを経て独立。難しいことを簡単に説明することに定評があり、大学時代に自主制作した経済学の解説本『T・K論』が現在もロングセラー。『カイジ「命より重い!」お金の話』をはじめとするシリーズ(サンマーク出版)、『社会人のためのやりなおし経済学」 (日経ビジネス人文庫)など、著書多数。

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