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即断即決せず 「優柔不断になる」 勇気

2016年07月08日 公開
2022年06月28日 更新

川村元気(映画プロデューサー)

あのヒット作のタイトルは半年寝かせた!?

 そう語る川村氏自身も、自らを「弱者」と位置づけている。「僕はめっぽう自己評価が低いんです(笑)。だから、まずはとことん失敗をしない方法を考え抜きます」

 川村氏は、製作する作品に関連する書籍や映画を見て下調べをし、無数の成功例と失敗例を分析し、同じ轍を踏まないよう細心の注意を払うという。

「『世界から猫が消えたなら』を書いたときもそうでした。映画人が小説を書いて成功した例はほとんどなかったので、オファーを受けてからもなかなか決断できなかったのです」

 ただ、ひとたび製作を始めれば、作品への執念をみせる。その執念がまた優柔不断につながっているようだ。それは、次のエピソードからもうかがえる。

「タイトルは『世界から僕が消えたなら』でほぼ決まっていたのですが、何か普通だなと感じていました。その理由は、『僕』が消えたところで、『自分が消えるから困る』というありきたりな答えになり、物語に広がりがないように感じたからです。でも、『猫』が消えることには、100人100様の意味と物語がある。そう考え、『僕』を『猫』に替えたのです。半年もの間、あれこれ迷った末の発明でした」

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新しいアイデアがベストとは限らない >

著者紹介

川村元気(かわむら・げんき)

映画プロデューサー・小説家

1979年、神奈川県生まれ。上智大学卒業後東宝㈱に入社、『電車男』『告白』『モテキ』等のヒットを放つ。2012年には小説『世界から猫が消えたなら』を発表し130万部突破のベストセラーとなり映画化された。その後も小説第2作『億男』、ハリウッドの巨匠たちとの空想会議を描いた『超企画会議』等、さまざまな作品を世に送り出している。

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