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いい年して幼稚な「ベビー社員」に振り回されないためには?

2016年07月19日 公開
2023年05月16日 更新

田北百樹子(社会保険労務士)

 

ベビー社員 五つのタイプ

 一口に「ベビー社員」といっても、その行動原理には様々なタイプがあります。そこで本書では五つのタイプに分類し、解説していきます。

(1)主演女優症型

 自分にスポットライトが当たらないと不機嫌になり、突然人前で泣いたり、夜中に長文のメールを送ってきたりする。悲劇のヒロインになりたがり、自分の不幸を自分で呼び寄せていることに気づいていない。

 周りの人にかまってもらおうとするため「これで私をやめます」など意味深な言葉をSNSなどに書き込み、芝居がかった行動を起こす。

 人にアドバイスを求める割には実行に移さず、「これはやめたら」と言われても、「それが私ですから」とまともな人なら絶対にやらない非常識なことを普通に行うため、人間関係の破綻が常につきまとう。

 職場では大事なイベントの時も、自分がやろうとしていたことができなくなると、大事な備品を持ったままトイレでしくしく泣き出し、進行を妨害する。

 基本的には自己愛が背景にあり、自分だけスポットを浴びようと画策する。スポットを浴びたがる割には成果が伴わないため、信用して動くと事実と異なることが多々出現し、結果的に振り回される。感情の起伏が激しくジェットコースターのように気持ちが上がり下がりするため一緒にいると疲弊する。

 このタイプを私は、主演女優"賞"ならぬ、「主演女優"症"型」と呼んでいます。

(2)ヒガミーライン型

 自分より優れた人を認めず、誰かが自分より上に行こうとすると嫌味を言ったり、よくない噂を吹聴し相手を陥れようとしたりする。自分の前で誰かが褒められていると退屈そうな顔をし、同意を求められると「でもさ、しょせん○○だから」と不快感を隠そうとしない。

 同僚や後輩と出かける際、上座を異常に意識し、居酒屋で自分よりも相手に先に料理が出されれば「この店の人間は上座がわからないのか」と大きな声で言うため座がシーンとし、一緒にいると恥ずかしい思いをする。

 自分より偏差値の高い大学を出ている人がミスをすると「〇〇大なのにねぇ〜。やっぱり社会に出てからが勝負だよな」と優越感に浸る。

 あまり努力をせずにおいしい思いをしたいという考え方が根底にある。努力をしている人の苦労を理解せず、楽なことばかりを選択しているため、中年になってからそのツケを払うことになる。

 人の不幸話が大好きで、幸せな話をしている人には「続けばいいけどね」と嫌味を忘れない。

 同僚や部下が自分を追い越しそうになると、わざと間違いが発生するよう仕向けるなど、油断すると手痛い思いをする。

 このように妬んだり、ひがんだりする人には一定の"妬み&ひがみポイント"があり、そのラインを踏んでしまうと嫌がらせを受けてしまうことから、本書ではそのラインをヒガミーラインと呼び、決して踏むことのないよう注意を促す。

(3)女帝たきやま型

「女帝たきやま型」というのは、権力を握って強い支配を行う女性をイメージしてつけたネーミングです。幕末の大奥の権力者「瀧山」が由来です。

 社内スキルに長けており、組織の全容を把握しないと気がすまない。ただし、情報を自分に集中させているため、自分がいないと仕事が回らないようなシステムを構築しているだけで、さほど優秀なわけではない。役職者には従順だが、出入り業者や部下には命令口調で絶対王政を敷いている。

 その割には社外スキルが低く、OA操作が苦手で、「エクセルで作成された資料は自分で手直しできないからワードで作り直しさせる」など意味のない仕事を与える。

「なぜそんな人がそんな立場に?」と不思議がられるが、役職者にしてみれば、自分が言えば従業員から反感を買いそうなことを代弁するなど嫌われ役を買って出るため、「自分の言うことをよく聞いてくれる理解者」に映り、さらに権限を与えるためますます増長する。

 自分なりに「会社を良くしたい」という気持ちはあるのか、部下に対し注意を与える。だが「みんなが言っているから。私は別にかまわないけど」と自分が責任を持たない言い方をするため、注意された側は「一体誰が言っているのですか?」と犯人探しが始まるなど、チームの人間関係を悪くする張本人でもある。

 にもかかわらず上級管理職からは信頼を勝ち取っているため、何も言えない空気が蔓延している。

 支配欲が強く、誰が権力者であるかを見抜き、その権力者には甲斐甲斐しく尽くすが、権力者以外には「どうしたらそこまで変われるのか」と別人のように横柄になる。

 基本的に仕事の実務能力はあまり高くないため、周りからの評判が下がれば、その役職から引きずり下ろされることが多い。

(4)ひとり懲罰委員会型

 自分の気に触ることをする人には、何らかの制裁を加えないと気がすまない。「あの人が○○(役職や地位)だなんて許せない」とその立場から引きずり下ろすまで追及の手をゆるめない。人を許すことができず、周りが「それくらいのこと……」と言っても「泣き寝入りするのは絶対に嫌だ」「こういうことが許される組織っておかしい」と自分の納得のいく謝罪や補償があるまで騒ぎ続ける。

 自分の相談相手であっても、協力態勢が乏しいと感じた時には今までの恩を忘れ、その人が一番困る方法で制裁を加える。かわいそうだと思って同情すると自分も痛い目にあう。

 上司・部下の関係であっても、上司に罰を与えることをいとわない。自分の味方になってくれる人を上手に見つけ、仕事よりも熱心に対象者に罰を与えるために画策する。「まさか、こんなことまで」と思われるようなことを普通に行うため、他者から見て少しでもパワーハラスメントと指摘されそうな管理職は立ち居振る舞いに細心の注意が必要になる。

 また、怒りの源を理解せずに上司・部下の関係だけで注意を与えると逆上するため、交渉力を身につけて対応することが必要になってくる。

(5)フローズンマウス型

 思っていることをすぐに口に出し、発言内容により周りを一瞬で凍らせる。「誰も言えないから自分が教えてあげないと」と妙な使命感を持ち、「服のセンスがない」「周りからの信頼が低い」「そそっかしい」など、「なぜ、あなたにそれを言われなければならないの?」と相手の反感を買うことを本人の目の前で口にする。

 自分としては「教えてあげたのだから感謝されるはず」と思っているが、周りは「自分はこんなことに気がついたということをただ言いたいだけ」とあきれモードになっている。発言内容を注意されると「思ったことを言って何が悪いのですか」と開き直り、「今度は誰に謝ればいいですかね」と反省がないため、人前に出すことをためらわれる。

 余計な言葉を発してしまう背景には「特別な自分」という思いがあり、「こんなことに気がついてさすがだね」と言われることを信じて言葉を発している。

 人が嫌がることが理解できない共感性の乏しさゆえ、いくら注意をされても毒を吐き続ける。

 ……あなたの身近にいるベビー社員は、どのタイプに当てはまりましたか?

 感情をコントロールできない人には様々な共通項があります。そのツボさえ理解できれば振り回されることもありません。

著者紹介

田北百樹子(たきた・ゆきこ)

社会保険労務士

新聞・雑誌で大反響を呼んだ「シュガー社員」の名付け親。札幌市出身。平成8年1月に「田北社会保険労務士事務所」を開業。保険関係の届出、就業規則作成、人事考課制度導入指導、社員教育、ビジネスマナー講座DVD制作、異業種ビジネス交流など、多方面に活動を展開している。主な著書に『シュガー社員が会社を溶かす』『ブラック企業とシュガー社員』(以上、ブックマン社)、『「シュガー社員」から会社を守れ!』『問題社員の取扱説明書』(以上、PHP研究所)などがある。

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