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オイルマネーに浴さず、原油に浸かる「石油の都」(アゼルバイジャン)

2016年08月04日 公開
2017年10月03日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(12)石澤義裕(デザイナー)

一般市民は地道に、ちょっと小ずるく働く

国家百年の計すら知らないアゼルバイジャンの国民といえば、バブルに浮かれることなく地道に働いています。ときには小知恵を働かせ、ときには王道をひた走り、ときには値引きすらも朝令暮改し、商売に励みます。

珍しい車に乗ってるねと話しかけて来た青年は、小1時間も世間話をし、身も心も打ち解けてすっかり友だちだと思ったころ

「ちょっと髪が長いかもね」

床屋でした。
ステルス営業……というか友だち商法だったのです。

一方、土産物屋顔負けの値引き攻勢に長けた床屋もいて、髪の毛は守ったものの髭を剃られてしまいました。さっぱりした顔を鏡に写し、やおら値上げ交渉に入る掟破りの戦略です。

熱心な売り込みもさることながら、サービスの本質たるものを見せつけられることもあります。
レストランでワインをオーダーしたら、

「Wine, no drive!」

売り上げよりも飲酒運転を気遣うとは、90カ国以上訪問して初めてのことです。


ついつい髭を剃ってしまった床屋。英語は全然喋れないのに、営業トークが上手い!

 

衝撃の「原油風呂」のサービスとは?

勤労者は決してオイルマネーに浴することがありませんが、そんな人たちでも原油に浸かることのできる場所ならあります。

その名も「原油風呂」。

昔、湾岸戦争で水鳥が真っ黒になった写真がありましたが、似てます。そっくりです。効能どころか、一説には発ガン性を疑われていながらも、一応、健康商売。サナトリウムが経営しています。

ひとっ風呂浴びてきました。

健康に良くないとの理由で、15分しか入浴させてくれないのは、ある意味良心的です。

そして風呂上がりに、衝撃的なサービス待ち受けていました。
べっとりとした重油はシャワーでは流れ落ちず、男性スタッフがこそぎとってくれるのです。

普通の靴べらで。

あろうことかご本尊まで。

丁寧に。

何度も。


原油風呂は、風情もなんにもない普通の浴槽。原油は使い捨てです。

著者紹介

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)

デザイナー

1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。新宿にてデザイナーとして活動後、2005年4月より夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。

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