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知らないうちに進行する「あの病気のリスク」

2016年08月03日 公開
2023年05月16日 更新

森田 豊(医療ジャーナリスト)

がん ~「前立腺がん」が増えている!?~

 がんは日本人の死因の第1位を占める病気です。1950年には全死亡者数の7%に過ぎませんでしたが、81年以降は死因トップを走り続け、2013年の死亡者数は全体の3割を超える36万人強まで増加しました。つまり、日本人の3人に1人はがんで亡くなっているのです。

 身体が正常な状態であれば、約60兆個の細胞の数はほぼ一定に保たれます。しかし、食生活や生活環境などさまざまな理由で遺伝子が突然変異すると、細胞の数が無制限に増えてしまう。これが「がん」であり、ほぼすべての臓器にできる可能性があります。

 最新の統計によれば、がんの中で最も死亡者が多いのは「肺がん」。2位が「大腸がん」、3番目が「胃がん」です 。

※国立研究開発法人国立がん研究センター 2015年のがん罹患数、死亡数予測より

 ただし、1位~3位には入っておりませんが、中でも注意したいのは近年患者数が伸びている「前立腺がん」。死亡者数は2015年で12,200人に

上ると予測され、2000年の2倍以上、1995年の約3倍に上ると推定されています。

 前立腺がんが急増した理由は、いくつかあります。まず、日本人の寿命が延びたこと。前立腺がんは比較的進行が遅く、年齢が上がるごとに発症率が高まります。

 さらに、日本人の食生活が欧米化し、動物性脂肪を多く摂るようになったことも原因の一つでしょう。

 一方で、近年は血液検査だけで前立腺がんを早期発見できる「PSA検査」が普及し、患者が顕在化しやすくなったという背景もあります。

 いずれにしても、がんで命を落とさないためには、何よりも早期発見・早期治療が肝心。あなたの前立腺がんのリスクはどの程度か、チェックリストで確かめてください。

 どのがんの予防にも効果的なのは、食生活の改善です。肉類の食べすぎを避け、緑黄色野菜を多く摂るよう心がけてください。洋風の食事よりは、和食のほうがバランスよく野菜を摂れるのでお勧めです。

 また、大豆や緑茶などは、前立腺がんの予防に効果的と言われていますので、普段の食事に積極的に取り入れましょう。

 適度な運動を習慣づけ、肥満にならないよう心がけることも、がんのリスク低下につながります。

 

前立腺がんチェックリスト

1.50歳以上である。

2.父親や兄弟など、血縁者に前立腺がんの患者がいる。

3.チーズ、牛乳などの乳製品が好きだ。

4.肉類など、動物性脂肪が多い食べ物が好きでよく食べる。

5.緑黄色野菜が嫌いであまり食べない。

6.日頃、運動をほとんどしていない。

7.肥満である。

8.性活動が活発である。

9.生活パターンが一定しておらず、不規則な生活をしている。

10.ストレスが多い。

 

※3個以上当てはまれば経過観察。4個以上もしくは2に該当する人はなるべく早くがん検診を受けましょう。

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著者紹介

森田 豊(もりた・ゆたか)

医療ジャーナリスト

1963年、東京都生まれ。秋田大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。東京大学医学部附属病院助手、米国ハーバード大学医学部専任講師、埼玉県立がんセンター医長、板橋中央総合病院部長を経て、現職。医師として現場に立ちながら、テレビや雑誌で医療情報を発信。近著に『今すぐ「それ」をやめなさい!』(すばる舎)など。

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