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人工知能(AI)のプログラミングには40代が適している

2016年10月11日 公開
2016年10月11日 更新

清水亮(UEI代表取締役社長)

人工知能の分野なら四十代の経験が生きる

ただし、これから始めても十分勝負できるプログラミングの分野があるという。それが、人工知能のプログラミングである。

「人工知能のプログラミングは、まだ競争相手が少ない未開拓の分野です。ビジネスとしてこれから始めてたとしても、成功する確率は高いと思います。
また、人工知能のプログラミングは、従来のものに比べて簡単に書けることも、40代がいまからでも勝負できる大きな理由です。従来は、ウェブサービスのプログラムを書くのでさえ、五つの言語を習得する必要がありました。しかし、コンピュータの進化形である人工知能には、必要なエッセンスはすでにプログラムされているので、Phytonというプログラミング言語だけで事足ります。学ぶことが少なくてすむので、学習能力に衰えを感じる四十代でもチャンスがあるというわけです」

従来のプログラミングが「コンピュータを動かす方法」であるのに対し、人工知能のプログラミングは「人工知能を育てる方法」だという。いわば子育てに似ており、「40代がこれまでに培ってきた知見や経験が役に立つ分野」と清水氏は話す。

「人工知能に何をどう教えるかによって、人工知能が到達できる知性には大きな差が生まれます。これは笑い話ですが、肌を露出したセクシーな女性の写真だけを人工知能に見せて、『インターネットで探してこい』と指示すると、プロレスラーや相撲取りの写真を探してきます。つまり、『プロレスラーや相撲取りは、セクシーな女性には当てはまらない』ということを学習させるためには、正解例だけでなく、失敗例も見せる必要があるということです。
自分にとって当たり前の概念や価値観が通じない相手をどう教育するのか。これを考えるのが、人工知能のプログラミングの醍醐味と言えます。人工知能に関わる中で、『知性とは何か』『生きるとは何か』といった根本的な疑問にも向き合うことになるので、人生経験の豊富な四十代こそ学びが多い分野だと思います」

1万5千年に一度の革命は間近に迫っている

社会の人工知能化が進み、労働の大半が人工知能に取って替わられる時代がすぐそこまでやってきている。その時期を「五年以内」と清水氏は予測する。

「先日、『人工知能は人間を超えるか』というベストセラーの著者の東京大学の松尾豊先生にお話をうかがった際、『人工知能はインターネットの発明どころのインパクトではない。農耕革命と同じくらいのインパクトだ』とおっしゃっていました。つまり、1万5千年前に一度起こった農耕革命に匹敵する変化が、これから起きるということです。
現実に、名医以上に病気診断ができる人工知能が登場していますし、ロボットタクシーの実証実験も始まっています。今後、名シェフの技術を学習したロボットが厨房に立てば、全国均一でおいしい料理を提供するフードチェーンが誕生するかもしれません。
ただ、先にも触れたように、人工知能で何ができるかを考える人がまだ少ない状況です。だからこそ、40代の人でも成功できる可能性が高い分野と言えるでしょう」

 

《『THE21』2016年10月号より》

著者紹介

清水 亮(しみず・りょう)

ギリア〔株〕代表取締役社長

新潟県長岡市生まれ。プログラマーとして世界を放浪した末、2017年にソニーCSL、WiL LLC.と共にギリア株式会社を設立、「ヒトとAIの共生環境」の構築に情熱を捧げる。東京大学先端科学技術研究センター客員研究員。主な著書に、『教養としてのプログラミング講座』(中央公論新社)、『よくわかる人工知能』(KADOKAWA)『プログラミングバカ一代』(晶文社)などがある。

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