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なぜ今、「不動産投資」が人気なのか?

2016年09月20日 公開
2023年05月16日 更新

玉川陽介(コアプラス・アンド・アーキテクチャーズ代表)

 

エリア、タイプ……どんな物件に投資すればよい?

いざ物件を探すとき、どこに気をつければいいのだろうか。失敗しない物件選びのコツとは。

■1棟か? 区分か?
老後対策なら区分所有もOK! ただし小さくやるのはNG

王道は1棟買い。規模のメリットで相応の利益が見込め、多少のアクシデントもリカバリーしやすくなります。ただし億単位の資金が必要で融資条件も厳しくなるので、老後の備えとして投資するのなら区分所有でも十分です。その際、注意してほしいのは、あまり小さくやろうとしないこと。たとえば2,000万円以下の物件なら手が出しやすく感じますが、立地や築年数によっては、20年後、30年後まで借り手や買い手がつくとは限りません。むしろ立地にこだわった新築や築浅の5,000万円の部屋のほうが、借り手もつきやすく売却もスムーズな場合も多い。「手の出しやすさ」より「本当に良い物件」を選ぶべきです。

■東京か? 地方か?
地方の物件はハイリスクハイリターンということを心得て

不動産投資最大のリスクは「空室」です。手堅い投資を考えるならば、絶えず人口が流入する東京の中心地がベスト。もちろん利回りの高い地方の物件に投資妙味があるのも確かです。ただし、地方は中心部でも借り手がつかないマンションがたくさんあります。地元で土地勘がある、自分の足で物件探しやリフォーム、管理に携わる余力がある、ある程度の部屋数がある1棟物件を所有する(大口顧客として管理会社に動いてもらいやすい)などの「強み」がないと成功しにくいのが現状。出身地、大学時代に住んでいたなど、ある程度の土地勘がある場合は、地方の物件に投資するのもアリでしょう。

■ワンルームか? ファミリータイプか?
東京のワンルームは幅広いニーズに対応できる

東京で区分所有するなら断然ワンルームです。東京は単身者が多く、住まいにこだわりたい人から、寝られればいいという人までニーズもさまざま。新築から中古まで幅広い範囲で検討ができ、場所によっては事務所や倉庫としてのニーズも見込めます。中でも、千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区の都心5区が最適。家賃によるキャッシュフローはほぼ見込めませんが、30年後も資産価値は落ちないと予想されます。一方、地方はワンルームの需要は少ないのでファミリータイプが有利。しかし、近年、新規アパートの乱立により空室率増加が問題になってきており、物件の見極めが重要です。

■一番大切なことは?
建物は価値が落ちても、土地の価値はほぼ変わらない

物件を選ぶ際に最も重視すべきは「場所」。建物は、年月が経つにつれて価値が下がっていきますが、良い立地の土地は目減りしない“資産”です。ですから、同程度の利回り、もしくは同程度の投資条件の物件が複数あれば「最も場所(立地)が良い物件」を選ぶべきです。ここ3年ほどの物件価格の上昇で、区分(マンションの1室)を1つ所有しているくらいでは、月々のキャッシュフローは大幅なプラスになりにくくなっています。しかし、場所さえよければ借り手はつくので返済は滞ることなくスムーズに進みます。そして、20年後、30年後には、数千万円の土地資産を老後資金として残す算段ができるのです。

 

業者の見つけ方&つきあい方

良い物件に出合い、自分の時間や手間をかけない賃貸運営をするためには良い業者選びが不可欠。どのように選ぶべきなのだろうか。

■どうつきあう?
業者とのつきあいは、ビジネスと同じと心得よう

不動産業者に良い物件を教えてもらうには、日頃のコミュニケーションが大切。たくさんいる投資家の誰に、どの物件を案内するかは業者次第だからです。業者に敬遠されるタイプは次の4つ。「業者を信用しない」「業者をたくさん回っている」「性格や態度が悪い」「自己資金がない」。ビジネスと同様、まずは信頼関係を築くようにしてください。また、有能な管理会社を見極める判断基準は「賃貸付けをする営業手腕の高さ」、つまり入居率の高さです。大手は建物を売るのがメインで管理業務はおまけになりがち。一番良いのは地元エリアで手広く仲介・売買・管理業務を行なっている地域密着の会社です。

 

不動産投資で失敗しないためのポイント

大きなお金を動かす不動産投資には不安がつきもの。そんな不安を解消するためには何をすればいいのか。

■何に気をつける?
すべて人任せにせず、自分でも考えることが大切

信頼できる業者を見つけることは大切ですが、「あの人が言うから間違いない」は失敗のもと。どういうメカニズムで収益が生まれるのか、なぜこの物件が確実なのかなど、少なくとも不動産投資の仕組みを理解し、自分の頭で考えることが基本です。そのうえで投資をし、分析をして、見る目を鍛えていってください。書籍やセミナーでの勉強も悪くはありませんが、視点が偏っていることもあるので、ある程度の不動産投資の知識を身につけたら、次は日経新聞や専門誌などプロ投資家と同じ情報ソースから情報を集めるといいでしょう。大きな視点で不動産市場や経済全体を俯瞰することが重要です。

《取材・構成:麻生泰子》
《『THE21』2016年9月号より》

失敗しない不動産投資の心得<後編>へ続く

著者紹介

玉川陽介(たまがわ・ようすけ)

コアプラス・アンド・アーキテクチャーズ[株]代表取締役

1978年、神奈川県生まれ。学習院大学卒業。大学在学中に統計データ処理受託の会社を設立。同社を毎年増収増益で成長させ、2006 年に売却。その資金で本格的な投資を始める。自らの投資収益を主たる収入源としながら、『週刊東洋経済』など経済誌への記事執筆も行なっている。著書の『不動産投資1年目の教科書』(東洋経済新報社)は3万部を超すロングセラー。

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