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なぜ今、「不動産投資」が人気なのか?

2016年09月22日 公開
2023年05月16日 更新

長岐隆弘(不動産鑑定士)

失敗しない不動産投資の心得<後編>

マイナス金利の導入や消費税増税の延期もあり、最近さらに注目を集めている不動産投資。年金があてにならないかもしれない今、老後資金対策としても、サラリーマンの資産運用としてもお勧めだという。前編の玉川氏に続き、メガバンク出身の不動産鑑定士・長岐隆弘氏に「失敗しない不動産投資の心得」をうかがった。

 

今、不動産投資がお勧めの理由

株式や投信、FXなど数々の投資手法がある中で、なぜ不動産投資はお勧めなのだろうか。

■お勧めの理由①
サラリーマンにこそ有利な手堅い投資
これまで、高額な資金が必要な不動産投資は、資産家の資産形成法だと思われ、サラリーマンの投資としてはあまり一般的ではありませんでした。しかし近年、サラリーマン大家が増え始め、彼らがコミュニティなどを作り情報を発信することにより、その実態や手法が広まってきました。不動産投資は、自己資金がなくても、金融機関からの借入金でキャッシュを増やせるという、実はサラリーマンが最も始めやすい「一番手堅い投資法」ということが浸透してきたのです。

■お勧めの理由②
売買のタイミングをあまり気にしなくていい
基本的にすべての投資は「安く買って、高く売る」のが原則。しかし、不動産投資は、キャピタルゲイン(売却益)だけでなく、インカムゲイン(家賃収入)でも利益を出せる唯一の投資。持っているだけで利益を見込めるので、他の投資ほど売買のタイミングを見計らう必要がないのです。物件価格の上昇が続く今、下がり始めてから購入したいと思いがちですが、そのタイミングを見極めるのはプロでも難しいこと。いつかやるつもりなら、早いほうがそのぶん収入を得られる期間も長くなります。

 

不動産投資を始める前に知っておきたいお金のこと

不動産投資にはある程度の元手が必要なイメージがあるが、実際にはどれくらい必要で、どう調達すればいいのだろう。

■もし金利が上がったら?
日本では、金利上昇によるリスクはそれほどない
当面、日本で金利が急上昇する可能性は低いと言えます。たとえインフレが生じてローンの金利が上がったとしても、不動産は実物資産ですから、物件価格や家賃も連動して上がっていきます。また、インフレ下では価値の下がるお金よりも不動産を持っていたほうが断然有利です。さらに、世界的に見れば、日本の不動産投資は、利回りと金利との差である「イールドギャップ」が大きい。現在、日本の不動産投資の実質利回りは5%くらいが平均なので、たとえ金利が1%上がったとしても3~4%の利ざやは確保できます。ちなみに、ニューヨークやロンドンの物件の実質利回りは1~2%程度。実は、日本の不動産投資の実質利回りはとてもいいのです。

■投資ローンの種類は?
最初はアパートローンから始め、プロパーローンに移行
大きく分けて、アパートローンとプロパーローンがあります。アパートローンは、一定の条件をクリアすれば融資が下りるパッケージ型で、いわば住宅ローンの投資版。一方、プロパーローンは、対象者の財務内容、取引状況、収益性、物件評価額から総合的に判断し、金利や融資枠を決めるオーダーメイド型の事業ローン。融資枠がアパートローンよりも大きいのが特徴です。サラリーマン投資家の第一歩は、サラリーマンの信用で融資が受けられるアパートローンがお勧めですが、1棟物件を購入する場合、1、2棟で融資枠を使い切ってしまうでしょう。脱サラを目指すのであれば、2棟目以降は、1棟目を担保にプロパーローンを組むのが一般的です。

■ローンの審査基準ってある?
投資ローンの審査基準は、ヒトではなくモノ(物件)にある
ローンを担当する銀行員は、不動産鑑定のプロです。投資ローンの審査において、銀行が最も重視するのは、ヒト(属性)ではなくモノ、つまり物件(不動産)です。その物件に、収益を生み出す「事業性」、返済が滞ったときは担保として売却できる「資産価値」があるか――この2点をクリアしたうえで、3番目にお金を借りる本人の属性を審査するという考え方で、ローンを出すか否かを判断します。まず属性ありきで、次に資産価値という住宅ローンとは異なるのです。つまり、銀行からローンを借りるためには、収益性と資産価値が高い物件を探し出すこと。それができれば、年収や勤め先などの属性が多少低くても不動産投資を始めることは可能です。

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著者紹介

長岐隆弘(ながき・たかひろ)

不動産鑑定士/不動産投資家プロデューサー/アセットライフマネジメント[株]代表取締役

1972 年、神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、住宅メーカーに入社し、不動産鑑定士を取得。その後、大手不動産会社に転職し、多くの鑑定評価を行なう。その実績を買われメガバンクに転職するが身体を壊し休職。その頃から自身も不動産投資を始める。退職後、アセットライフマネジメント[株]を設立。不動産投資家育成協会代表理事。著書に、『銀行員だけが知っているお金を増やすしくみ』(集英社)など。

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