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「営業で一番大切なこと」はモロッコ人に教わった(モロッコ)

2017年01月07日 公開
2017年08月10日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(17)石澤義裕(デザイナー)

日本人も真似したい「怒涛のクロージング」


小粋な衣装に身をまとうベルベル人。ベルベル人こそが、モロッコ人のウザさなのです。

彼らはまた、消費者の動向を探るなんて小賢しいことはしません。

とりあえず、ニイハオ~と声をかけ、ちょっとでも反応したら先方の戦法。

ボクらは無駄に愛想がいいものだから、アンニョンハセヨ~と笑顔を振りまいては術中にはまってしまいます。

コンマ1秒でも商品を手にすると、
「いくらなら買いますか~?」
ついつい値段でも訊こうものなら法外な金額を請求され、買うとも言っていないのにラッピングし始める手癖の早さ。

立ち去ろうとしても
「ラストプライスはいくら?」
買うことを前提とした商談に持ち込まれます。

消費者が誰であれ、自分の土俵に連れ込む技に長けているのです。

売り込めば売り込むほど売れないと言われる時代において、商品のプレゼンは一切なく、ひたすら価格交渉によるクロージング攻勢は清々しいものです。

モノを売るとは「信用の蓄積」ではなく、まさに「一期一会」。買わない客には捨て台詞も惜しまない、真剣勝負なのです。

また先般紹介した公共道路の私設管理人ですが、昼に駐車場代を払っても、夜になると別の輩に請求されるダブル請求。
金目のものを積んでいそうだと難癖つけては、追加料金を請求する提案型営業もお得意です。

商品を選ばず、商品の説明をせず、ひたすら価格交渉。さらに想定外の追加請求。

この営業力をもってして、世界の三傑を名乗れるのです。

 

挨拶すらも現金化!?

先日、恥ずかしながら遭難しました。

4時間コースの裏山散歩道を5時間も歩いてて気づいたのです、あれっボクら迷子じゃね?

通りかかったラクダ使いに道案内を頼んだら、100メートルごとに座り込みます。チップを払わないと動かない現金な奴でして、小銭の切れ目が縁の切れ目となり逃げられました。

水無し川をさ迷い歩き、ヤギを連れた娘さんに「村はこっちですかね~?」と声をかけたらチップをよこせとのたまわれ、すれ違った男性にいたっては、挨拶をしただけで右手を差し出します。
「ハロー」のひとことですら現金化する錬金術師、モロッコ人。

日没。

無料だけど、頼りにならない満月。

闇夜に村の灯りを発見しましたが、足元は奈落の崖。

出し渋ったモロッコ紙幣を握りしめるもすでに人の気配はなく、お金の使い方まで教えてくれるモロッコなのです。

 


迷子になった現場。100%、帰還する自信なし。

著者紹介

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)

デザイナー

1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。新宿にてデザイナーとして活動後、2005年4月より夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。

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