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良いものを知ってこそ、良い作品ができる 刀鍛冶 吉原義一

2017年01月10日 公開
2023年07月12日 更新

<連載>一流の職人に学ぶ「仕事の流儀」第2回

良いものを見て作品の「違和感」に気づく

よい日本刀は、美しさだけでなく、よく切れることも大切。切れ味を確かめるために、以前は畳で試し切りすることもあったという。

 

 比較的スムーズに刀鍛冶になることができた義一氏だが、「独立してからが本当の修業だった」と振り返る。

 「5年の修業を終えたくらいで、本当に良い作品を作ることなど到底できません。刀を作り続けるのはもちろんですが、何より良い作品を見ることが重要。良い作品を見て理想的なイメージを目に焼きつけて初めて、自分の刀の微妙な曲りやねじれなど、ちょっとした違和感に気づくことができる。良いものがわからないと、良い作品は作れません。そのため、日本刀の鑑賞会には欠かさず通うようにしていました」

 刀鍛冶になってから13年後、義一氏は新作刀展覧会に審査なしで出品できる「無鑑査」という称号に最年少で認定された。「無鑑査」の称号を持つ刀鍛冶は全国で16~7人。平均して50歳過ぎだという。それを36歳の若さで手にしたのだ。

「でも、34歳の時点で『無鑑査』を取る資格は得ていたのですが、『若すぎるから』という理由で36歳まで見送られてしまったのです(笑)」

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良い仕事は「速さ」から生まれる >

著者紹介

吉原義一(よしわらよしかず)

刀鍛冶

1967年、東京都生まれ。85年、父である義人のもとで修業を開始し、5年後に文化庁認定刀匠となる。その後、高松宮賞、文化庁長官賞など数々の特賞を総なめにし、36歳で審査なしで展覧会へ出品できる「無鑑査」に認定された。

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