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生き残るために「攻めの仕事」を 和菓子職人 水上力

2017年03月10日 公開
2023年07月12日 更新

<連載>一流の職人に学ぶ「仕事の流儀」第4回

和菓子の領分を守る職人のプライド

写真は、左上が椿、左下がふきのとう、右上が紅葉、右下が桜をそれぞれ表現している。

 あくまで純粋な和菓子作りにこだわり、伝統を発信していく。こうした挑戦を水上氏は「攻めの伝統」と呼んでいる。最近では、和菓子に西洋の味を取り入れて生き残りの道を模索する職人も多いが、水上氏はその流れをどう考えているのだろうか。

「私は、和菓子にはそれ相応の領分があると思います。和菓子職人が、洋菓子と共存を図ろうとしても、伝統として根付かないような気がするからです。それどころか、強大な洋菓子の前に正当な和菓子が飲みこまれ、消えてなくなってしまう危険性もあります。

 それよりも、『人々の生活に浸食した洋菓子に、自分の餡子はどれほど通用するのか?』といった、西洋菓子の浸食に対抗するレジスタンス的な姿勢を大切にしていきたいのです」

 我々ビジネスマンの仕事も、新しい技術や領域に脅かされることは多い。しかし、それに迎合するのではなく、自分仕事の領域は守りつつ、攻める仕事を意識していきたい。

 

2017年4月号 一流の職人に学ぶ「仕事の流儀」

 

写真撮影 まるやゆういち

著者紹介

水上力(みずかみ・ちから)

和菓子職人

1948年、東京生まれ。江戸菓子屋の4男として育つ。京都、名古屋で和菓子職人としての修業を積み、77年、東京・小石川に「一幸庵」をかまえる。国内外での講演などを通じ、和菓子を世界へと発信し続けている。

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