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つらい仕事も楽しみに変わる5つの方法

2017年09月07日 公開
2022年12月19日 更新

泉谷直木(アサヒグループホールディングス〔株〕代表取締役社長兼CEO)

泉谷直木

 

「モグラ叩き」がモチベーションを下げる!?

そして5つめに挙げたのが、「うまくいかないときこそ、ロジカルに普遍解を求めること」。一見すると思考術の話に思えるが、実はモチベーションと深く関連している。

「目の前の問題を1つずつ叩いて対処する『モグラ叩き』は、その場限りの解でしかない。根本的な解決にはならないので、どんなに頑張って叩いても会社や個人の業績は上がらず、モチベーションも向上しません。

そもそも、なぜ人間が悩むかと言えば、『わからない』から。目の前の問題が起こっている原因がわからないから、悩むわけです。だったら、悩みを解消するには『わかる』ようにするしかない。つまり、今起こっている現象を分析し、原因と結果の因果関係を突き止め、普遍解を見つけることが重要なのです。

物事がうまくいかないとき、原因はたいてい3つに絞られます。1つは、計画そのものが間違っている。2つ目は、計画は正しいが、やり方が間違っている。3つ目は、計画を開始した後で状況が変わったのに、ずっと同じやり方を続けている。ほとんどの問題は、この3つのいずれかが原因です。

原因さえわかれば、自分の上司にそれを説明し、計画ややり方を変えてもらうことも可能です。やり続けてもうまくいかないなら、どこかで潔く方針を切り替えなければ、悩み続けるだけでモチベーションをさらに下げることになります」

 

トイレ修繕やどぶ掃除も真剣にやった新人時代

泉谷氏は会長になった現在も、5つのモチベーション管理術を続けていると話す。とはいえ、「仕事を楽しもう」と考えていても、意に沿わない仕事を与えられると、なかなかやる気が出ないという人は多いだろう。

だが泉谷氏は「人から言われたことを真剣にやるからこそ、自分のやりたい仕事や面白い仕事が与えられる」と話す。

「私が新人時代に配属されたのは、工場の倉庫課でした。新入りですから、言われたことは何でもやりましたよ。トイレの修繕もしたし、大雨が降って倉庫に水が流れ込みそうになったときは、下着一枚になってどぶ掃除をしたこともあります。

『言われたことをただやるだけなんて、バカみたいだ』と思う人もいるかもしれません。でも私は、『入社して最初の10年は修行の時期だから、言われたことは全部やる』と決めていました。

すると面白いことに、1つの仕事をやり遂げるたびに周囲から認められ、人から言われることのレベルがどんどん上がっていったのです。そして工場にいるあいだに、人事や財務、庶務や調達まで、ひと通りの仕事を経験させてもらいました。

もし私が『なんでどぶ掃除なんか』とやる気を失い、適当にこなしていたら、周囲も私に与える仕事のレベルを上げようとは思わなかったでしょう」

 

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著者紹介

泉谷直木(いずみや・なおき)

アサヒグループホールディングス〔株〕代表取締役会長兼CEO

1948年、京都府生まれ。京都産業大学法学部卒業後、朝日麦酒㈱[89年にアサヒビール㈱に社名変更、2011年に純粋持株会社アサヒグループホールディングス㈱]に入社。1986年、広報企画課長。95年、広報部長。98年、経営戦略部長。2003年、取締役。06年、常務兼酒類本部長。09年、専務。10年、アサヒビール㈱社長。11年、持株会社制への移行により、アサヒグループホールディングス㈱社長に就任。16年3月より現職。

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