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やればできる。でも「最低限」しか動かない(カメルーン)

2017年10月03日 公開
2017年10月03日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(26)石澤義裕(デザイナー)

せっかくのポテンシャルを活かせない理由とは?

具だくさんの闇鍋カメルーンは、ポテンシャルだけはあります。

やればできるのですが、ぎりぎりまで頑張らない仕事っぷり。
「不屈のライオン」と崇め奉られるサッカー強豪国なのに、対日本戦は0勝3敗1分5失点。「眠れる獅子」かと思いきや、シドニーオリンピックは金メダル。本気を出せば、ざっとこんなモンです。

頭だって、意外にイケます。
フランスの傀儡通貨CFAフランで経済を支えながらも、イギリス連邦に加盟する絶妙な洞が峠外交。
英語もフランス語もイケるバイリンギャルとして、中央アフリカの輸出入を牛耳るフィクサーです。

そこそこ資源もあります。
原油やカカオを輸出し、林業から漁業まで漏れのない第一次産業。
加えて、消費力としての中所得者層が増えている、元気ハツラツ成長期。

体力、頭脳、資源と三拍子揃いながらもイマイチな存在感は、惜しむらくは惜しみなく努力を惜しむからです。

言われたことの最低限しか動かない「無駄」のない働きぶり。
経験値を積まない燃費の悪さと、無駄や不合理を気にしない大らかさ。
准先進国の予備軍数歩手前で、足踏みしています。


クローゼットの扉かと思ったら、トイレ。忍者屋敷のような、常識にとらわれない家づくりです。

 

大胆に間違った地図と「謎のルーティン」

カメルーン随一の港町で、運送会社を探したときのことです。

一丁前にロゴマークを持ち、海外支店を構える一流の地元企業を見つけましたが、豪快に間違っているホームページの地図。曲がり角をひとつふたつ間違えたレベルではなく、渋谷と鶯谷くらいの差があります。

泣く泣く遠く離れた営業所までタクシーを飛ばし、訴えました。

「地図、違うじゃん!」

あ、そうなの、の一言もなく、馬耳東風の薄ら笑い。お詫びもお礼も一切なく、然るべき部署に報告する気配すらない黙殺感。

自分の業務以外は、びた一文関わらないという堂々とした清々しさ。無駄のない仕事術です。

この原稿を書くにあたって件のホームページを確かめたら、間違った地図は健在でした。期待を裏切らない彼らです。

また、クレームという経験値を活かさない仕事術なので、不合理なことがあっても「改善」はありません。

どんなに意味不明なルーティンであっても、従順に繰り返します。
訪問するたびに、3階の事務所から2階に促され、2階では3階を指さされ、再び3階に上がると2階の一室に案内され、1分と待たずに3階の会議室を案内されるのです。
なんですか、これ? おまじないですか?

しかも必ず、各フロアのほぼすべての部屋をノックしてまわり、まったく縁もゆかりもないスタッフとのご挨拶。

「はじめまして、貨物船を探している日本人です」

ようこそ~と、困惑の薄ら笑い。全員、微妙な空気。
さっぱりわからないのです。

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それなりに働くけど、結果への興味はゼロ >

著者紹介

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)

デザイナー

1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。新宿にてデザイナーとして活動後、2005年4月より夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。

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