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「個」の力が組織を凌駕する時代の経営論【前編】

2017年11月13日 公開
2017年11月13日 更新

【連載 経営トップの挑戦】第25回 須藤憲司

 

リクルートの誘いを秒速で断る青年との出会い

――そうしたモデルを思いつかれたのは、いつ、どんなことがきっかけだったのですか?

須藤 これには面白い話があります(笑)。10年前、リクルートで、新規事業を考える研修を受けました。まず漢字1文字でコンセプトを決め、3ヵ月かけて取り組むもので、僕は「働」という漢字を選びました。何か新しい働き方を探りたいと思ったのです。

そのときに、僕が話を聞きに行ったのが、19歳のアフィリエイターでした。彼は月100万円くらい稼ぐすごいヤツで、とても面白い考え方をする子でした。今で言うユーチューバーみたいな感じですね。

話を聞いていてあまりに優秀だったので、僕のチームに来てくれないかなと思い、「うち(リクルート)に来ない?」と誘ったら、即答で断られたのです(笑)。

――なぜでしょうか。

須藤 このとき返ってきた答えが、プラットフォーム構想の最初のきっかけになりました。彼は、こう答えたのです。

「自分は、朝起きて、思いついたことを30分以内にやります。そして、昼頃にはもうその結果が出ている。でも、御社は大企業なので、そんなことはできないですよね?」

これには「おっしゃるとおりです」としか言えませんでした(笑)。この瞬間、世の中が、彼のような「個人」の発想・才能・情熱が発揮されやすい世界に変わってきていることを直観しました。大きな会社であることや、単純に集団であることの意味なんてほとんどないのだなと。ああ、社会が変わってきているな、という感覚を得たわけです。

クリエイティブな仕事って、かけた時間と成果が必ずしも比例しませんよね。そうなると、今のように「企業が個人の才能や時間を囲う」という状態は不自然で、個人の能力の使われ方はもっともっと変わっていくだろうと思ったのです。

――そこで「自分もアフィリエイターになろう」という方向ではなく、プラットフォームの方向に可能性を感じられたのですね。

須藤 彼のような人たちは間違いなくたくさん出てくるだろうと思いました。結局、研修の新規事業にはクラウドソーシングを選び、学生をはじめプロではないがスキルのある人にバナー広告を作ってもらったのですが、プロの制作会社に作ってもらうよりも断然よかった。既定路線ではなく、想定外のことが起こる面白さもありました。最終的には2万人の素人クリエイターが集まるプラットフォームになったのです。

こうして「個人の知恵を持ち寄って、集合知みたいなものを作って課題を解決するのって、やっぱり面白いな」と確信したのが、プラットフォーム事業をやるに至った原点です。

 

後編へ続く

 

                      <写真撮影:山口結子>

著者紹介

須藤憲司(すどう・けんじ)

[株]Kaizen Platform代表取締役

1980年、福島県生まれ。2003年に早稲田大学を卒業後、(株)リクルート入社。マーケティング部門、新規事業開発部門を経て、アドオプティマイゼーション推進室を立ち上げる。(株)リクルートマーケティングパートナーズにてリクルート史上最年少の執行役員を務めたのち、リクルートを退社し、13年3月にKAIZEN platform Inc.を米国で創業。17年7月には本社機能を日本へ移転、社名を(株)Kaizen Platformと改めた。国内での需要増加にともない、事業のさらなる拡充を図る。

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