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脳科学者が教える「記憶の作業台」の整理法

2018年02月19日 公開

枝川義邦(脳科学者/早稲田大学教授)

「記憶の作業台」を昼寝でリセット

ワーキングメモリという記憶を蓄える仕組みは、脳内のネットワークで形成されていますが、前頭前野がメインプレイヤーを担っています。

この前頭前野の機能が低下したときによいのは、まず「昼寝」をすることが挙げられます。前頭前野は、会社で言えば社長や役員のような、高位な意思決定機関です。そのため、朝起きてからずっとさまざまな情報が入り、昼過ぎには積み重なっている状態に。それをいったんリセットするのが「昼寝」というわけです。

昼寝が難しければ、何も考えずボーッとするだけでも、前頭前野の休息になります。同様に、自身を内省する「瞑想」をするのも良い方法です。

「昼休みに脳を休ませる」というと、スマホでネットを見たりゲームをしたりすることを思い浮かべる人もいるかもしれません。しかし、それでは別の情報が入ってきてしまうので、気分転換になっても、脳の休息にはなりません。あくまで情報をシャットアウトする時間を持つことが重要なのです。

 

「筋トレ」で記憶力が高まる理由とは?

脳の中で記憶の「保持」にとくに重要な役割を果たすのが、海馬です。海馬は、前頭前野に入ってきた記憶を、長期に渡り定着させるのか、破棄するのかを判断する役割を担っています。

知識を得ようとするとき、海馬は刺激されます。これを繰り返すと、海馬の入り口付近では、神経細胞が新しく生まれる「神経新生」が生じることが分かってきました。つまり、覚えようとすることそのものが、記憶力に関わる細胞を増やすのです。

ところで、ロンドンのタクシードライバーに関するエピソードをご紹介しましょう。道が複雑なことで有名なロンドンでは、タクシードライバーは道を隅々まで熟知しています。ロンドンのベテランタクシードライバーの脳を調べたところ、海馬が一段と大きかったそうです。道を新しく覚え、その記憶を「保持」し、タクシーを走らせるときに「想起」することを繰り返したために、海馬が大きくなったと解釈されています。覚えるのが得意な人は「覚え続けている」人であるということです。

また、「筋トレ」を習慣にすることも、記憶力の手助けとなります。筋肉を鍛えると負荷がかかり、筋繊維が一度破壊され、その後、強く太い筋繊維が再生されます。このとき筋繊維に含まれていた物質が血中に放出されるのですが、その中に「イリシン」というホルモンがあります。イリシンは、脳で「BDNF(脳由来神経栄養因子)」と呼ばれる、神経新生をサポートする物質を増やすと言われています。身体を鍛えることも、記憶力アップにつながるのです。

 

《『THE21』2018年2月号より》



著者紹介

枝川義邦(えだがわ・よしくに)

早稲田大学研究戦略センター教授/脳科学者

1969年、東京都生まれ。1998年、東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了、博士(薬学)。2007年、早稲田大学ビジネススクール修了、MBA。同年、早稲田大学スーパーテクノロジーオフィサー(STO)認定。2014年より現職脳の神経ネットワークから人間の行動まで、マルチレベルな視点による研究を行なう。『記憶力ドリル』(総合法令出版)など、著書多数。

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