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仕事の中で上手に休む、手抜きの仕方とは?

2018年01月11日 公開
2023年01月23日 更新

<連載>MBA医師が教える 40代からの「疲れリセット」術(5)裴英洙(医師/ハイズ代表取締役社長)

 

有能なビジネスマンは手抜きがうまい!

 また、これは人間の身体のバイオリズムを考慮したうえでも得策です。

 人間のやる気は、アドレナリンというホルモンが大きく関与しています。アドレナリンの分泌量は午前中に高く、午後に向けて徐々に下がります。したがって、重要な仕事や緊張感が必要なタスクは、できるだけ午前中に行なうのが非常に合理的なのです。

 しかし、だからといって、重要な仕事をすべて午前中に詰め込めばいいというわけではありません。下の図は、AさんとBさんの1日の集中力の配分を示したものです。2つの曲線を見比べると、Aさんは集中力に高低のメリハリがあり、Bさんは最初は高いもののなだらかに下がっているのがわかるでしょう。

 一般的に、やる気がある午前中は集中力も高くなるものですが、有能なビジネスマンは、やる気だけに頼らず、Aさんのように集中力をうまく配分しています。

 つまり、最初に重要な仕事(大皿)に着手したとしても、午前中をそれだけに費やさず、少し疲れを覚えたら、適宜別の業務を挟むのです。

 別の業務とは、手を抜くにふさわしい仕事――つまり頭を使わなくてもできるルーティンワークです。といっても、それらはいわゆる「単純作業」だけを指すものではありません。

 実は、クリエイティブで難易度の高い仕事にもルーティンワークはあります。たとえば、大工さんの「カンナ掛け」は高度な技術を必要としますが、熟練した大工さんは、難しいとも思わずに行なっているはずです。習熟によって高いスキルを得た仕事なら、思考力や集中力を最小限に抑えたまま遂行できるものなのです。

 経験を積んだ40代なら、そうした「隠れたルーティンワーク」を多く持っているでしょう。馴染みのある作業、慣れている仕事、苦もなくできることなど、思考力や集中力、体力を極小のままできる仕事をピックアップしてみましょう。こうした仕事は、一見すると「手抜き」には見えないもの。有能なビジネスマンは、こういった「休息用の仕事」を定型化して、日々の仕事の中にうまく配分しているのです。

 こうした「定型」は、生活習慣に生かすこともできます。毎日同じことを同じようにすることで、余計なことに頭を使わずにすむのです。

 たとえば私は電車に乗るとき、「3両目の2番目のドア」と乗車位置を決めていて、どこから乗ろうかといちいち考える手間を省いています。また、傘を「忘れないよう気をつける」ことに思考を割きたくないので、雨の日も折り畳み傘を使います。このような「頭の省力化」により、疲れの元を発生させないようにすることが大事です。

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著者紹介

裴 英洙(はい・えいしゅ)

ハイズ〔株〕代表取締役社長/医師/医学博士/MBA

1972年、奈良県生まれ。金沢大学医学部卒業後、金沢大学第一外科に勤務。医師として働きながら、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(慶應ビジネス・スクール)を首席修了。ビジネス・スクール在学中に、医療機関再生コンサルティング会社を設立。現在も医師として臨床業務をしつつ、医療機関経営に関するアドバイスを行なう。著書に、『一流の睡眠「MBA×コンサルタント」の医師が教える快眠戦略』(ダイヤモンド社)など。

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