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疲れを溜めない「ストレスコントロール」の極意

2018年01月18日 公開
2023年01月23日 更新

<連載>MBA医師が教える 40代からの「疲れリセット」術(最終回)裴英洙(医師/ハイズ代表取締役社長)

ストレスコントロール

怒りのピークは6秒間。その間を乗り切る!

 そのポイントとなるのは「最初の6秒」。

 人間の怒りのピークは6秒間と言われます。ですから、この6秒間をうまく乗り切ればいいのです。そのコツは「視点転換」。具体的な方法として、次の3つが挙げられます。

 1つ目は、違うことを考えること。人間は同時に2つの異なることを考えることが苦手です。ですから、好きなものを思い出すなど、怒りを別の思考に置き換えるのです。

 2つ目は、「~すべき(must)」という考えを捨てること。

 怒りは、内心抱いている理想と現実とのズレによって起こります。たとえば「部下はこうあるべき」「上司はこうあるべき」といった思いを強く抱いている人は、それに相反する現実に怒りを覚えやすくなります。

 対して、「他者は自分とは違う」と思える人は怒りを増幅させずにすみます。期限を守れない部下にも、考えを頑固に曲げない上司にも、その人なりの価値観や基準があるのだと思えば、怒りよりも「理解しよう」という気持ちを持てるでしょう。

「自分を曲げて相手に譲るなんて損だ」と思われるでしょうか? しかし、実はそうした考え方のほうが損につながります。なぜなら相手を自分の思うように変えることはとても難しく、そこにこだわるかぎりストレスはなくならないからです。

 ベストなのは、自分の価値観を保持しつつ、接し方を相手に合わせて変えること。仕事の遅い部下なら指示のレベルを下げる、頭の固い上司なら折衷案をいくつか投げかける、というように相手に合わせた方法を提供していくことで、相手との関係性が変わり、結果的に相手の行動も変わっていくでしょう。

 3つ目の視点転換は、「表わし方を変える」こと。怒りの感情をそのまま表わさず、笑いに変える──いわゆる「ネタ化」です。腹の立つことが起きてからの6秒間に「このエピソードを人に聞かせるとしたら?」と考える習慣を持ちましょう。

 その出来事を誰かに面白おかしく話す自分を想像すると、「つり銭を間違えられた」「注文と違うものが出てきた」などの怒りのモトが、格好のネタになることに気づくはずです。

「細かいことならともかく、ビジネスシーンでの理不尽な出来事に関しては難しい」という意見もあるでしょう。確かに、努力を評価してもらえなかったり、手柄を横取りされたりすると、笑ってすませる気持ちにはなかなかなれないものです。

 しかし、ここで大切なのは中長期的なスパンで考えることです。

 手柄を取られたと思う人は、1プロジェクトにつき1評価と思いがちですが、評価や成果は一朝一夕で手に入るものではありません。一時的に手柄を人に譲っても、腐らずに真摯に仕事と向き合っていれば、必ずどこかでリターンが来るでしょう。近視眼的にならず、中長期的に捉えたいところです。

 それはストレスの軽減につながるだけでなく、周囲の評価をも変えます。「良い働きをしているのにひけらかさない人」「人に手柄を渡せる器の大きい人」という印象がだんだんと浸透し、最終的に大きな人望を得られるチャンスともいえます。

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自分の強みを認識すれば、怒りを制御できるようになる >

著者紹介

裴 英洙(はい・えいしゅ)

ハイズ〔株〕代表取締役社長/医師/医学博士/MBA

1972年、奈良県生まれ。金沢大学医学部卒業後、金沢大学第一外科に勤務。医師として働きながら、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(慶應ビジネス・スクール)を首席修了。ビジネス・スクール在学中に、医療機関再生コンサルティング会社を設立。現在も医師として臨床業務をしつつ、医療機関経営に関するアドバイスを行なう。著書に、『一流の睡眠「MBA×コンサルタント」の医師が教える快眠戦略』(ダイヤモンド社)など。

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