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“現代の魔術師”が考える「超AI時代」の働き方

2018年01月15日 公開
2018年10月22日 更新

落合陽一(筑波大学助教/メディアアーティスト)

 

好きなことで価値を生み出す働き方に転換

 とくにやりたい仕事が思いつかないという人でも、何か趣味はあるでしょう。アートを鑑賞するのが好きだとか、サッカー観戦が趣味だとか。それに近しいところから、自分の能力を活かせる場所を探せばいい。

 だからこそ、好きなことが何もないという人は辛い。できれば、3つくらいは仕事になりそうな趣味(好きなこと)を持つことをお勧めします。合理性・利便性はコンピュータに吸収されてしまうけれど、趣味性は人間だけがその人の色をつけていけるのです。

 これからの日本社会では、会社に雇用され、労働し、その対価をもらうという従来の働き方から、好きなことで価値を生み出す働き方に、考え方も仕組みも転換することが求められてきます。これまで「ワークライフバランス」が重要と言われていましたが、近い将来、「ワーク“アズ”ライフ(ライフとしてのワーク)」の時代がやってくるのです。

 グローバル化や、インターネット環境と通信インフラの整備によって、いつでもどこでも働ける世の中になりましたが、これは一方で、ワークライフバランスの考え方が崩壊したとも言えます。ワークとライフの関係性が「バランス」でなくなった今、自分なりの人生価値を、ワークとライフの両面で生み出し続ける方法を見つけられた人が生き残る時代となるのです。

 

AI時代には「面倒なこと」が重要に?

 今後、自分の仕事がAIによって失われていくのではないかという漠然とした不安を持っている人は多いかと思います。AIがもたらす変化は確かに劇的ですが、私たちの仕事がただちになくなるわけではありません。今は、機械と人間のイタチごっこのスピードが昔より速くなったゆえに、それを肌で感じる人が多いのでしょう。

 たとえAIが人間の仕事を代替しても、人間とAIの間には必ずギャップがあります。たとえば、経理が自動化されたとしても、領収書をきれいに揃えて会計ソフトに入れる仕事は人間がしなくてはいけない。AIで便利になるほど、面倒な仕事を嫌がる人が増えて、面倒くさい仕事をきちんとやれる人が意外に重要になってくる側面もあります。

 今、私たちに求められていることは、AIへの恐怖をやみくもに掻き立てることではなく、新たな価値観を作り上げていくことです。自分のできることと、好きなことを掛け合わせた仕事を探し、ストレスの溜まらない働き方を始める。この「働き方のアップデート」をいち早く始めることが、これからの「超AI時代」を生き抜く最善の手段なのです。

≪『THE21』2018年1月号より≫
≪取材・構成:川端隆人≫

著者紹介

落合陽一(おちあい・よういち)

メディアアーティスト、筑波大学学長補佐・准教授

1987年、東京都生まれ。2011年、筑波大学情報学群情報メディア創成学類卒業後、東京大学大学院学際情報学府博士課程早期修了。博士(学際情報学)。15年より、筑波大学助教・デジタルネイチャー研究室主宰、Pixie Dust Technologies, Inc CEO。映像と物質の垣根を再構築する表現を計算機ホログラムによって実現するなど、計算機時代の自然観としてデジタルネイチャーと呼ばれるビジョンに基づき研究に従事。著書に、『超AI時代の生存戦略 シンギュラリティに備える34のリスト』(大和書房)など。

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