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好きなことをして「脳のアンチエイジング」を

2018年03月26日 公開
2023年03月23日 更新

茂木健一郎(脳科学者)

思考力を強化するカギは「達成の喜び」にあり

「年齢を重ねると“考える力”が衰える」……多くの人がそう考えているかもしれない。だが、茂木氏はそれを明確に否定する。

「年齢を重ねると脳は衰える、というのは大きな誤解。脳は何歳からでも育てることが可能です。キーワードは『達成』。脳は何かを達成するたびに、どんどん成長していくのです。

 学生時代、一所懸命に考えて問題がやっと解けたときの感覚を思い出してみてください。『できた!』『わかった!』という喜びでいっぱいだったはず。このとき、脳の中ではドーパミンという物質が分泌されています。ドーパミンとは、快感を生み出す脳内物質の一つ。この分泌量が多いほど、大きな喜びを得ることができるのです。

 脳は、このときの喜びが忘れられず、ことあるごとにその快感を再現しようとします。そして、もっと効率的にドーパミンを分泌するため、脳内では神経細胞がつながりあって、新しい神経回路が生まれる。つまり、脳が成長するのです。

 そして、快感を生み出す行動がクセになり、再び新しい問題に挑戦する。そのサイクルを、強化学習と言います。これを繰り返すことにより、思考の老化を防ぎ、いつまでも若々しい脳を保つことができるのです」

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著者紹介

茂木健一郎(もぎけんいちろう)

脳科学者

脳科学者。ソニーコンピューターサイエンス研究所シニアリサーチャー、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科特別研究教授。
1962年、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。
主な著者に『脳とクオリア』(日経サイエンス社)、『脳内現象』(NHKブックス)、『脳と仮想』(新潮社)、『「脳」整理法』(ちくま新書)、『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)、『脳と創造性』『脳が変わる生き方』(以上、PHPエディターズ・グループ)などがある。

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