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「空き家物件の再生」は、世の中をどう変えるか?

2018年03月18日 公開
2021年08月30日 更新

東京経済大学公開授業

ユニクロやマックのある街は空室が少ない!?

学生 以前、ユニクロやマクドナルドのある街は空き家が少ないと聞いたことがありますが、本当でしょうか。

菅谷 いい目の付け所です。こうしたトップクラスの小売企業は売上のために詳細な市場調査をしますから、出店された街は消費があり、不動産も流通し、空室も少ないと考えられます。

小木 そういう意味では、街の魅力を高める視点も重要ですね。実は私のゼミも学校の地元を盛り上げるために、「国分寺物語」というサイトを立ち上げ、街の魅力を物語という手法で伝える活動をしています。すでに6期目に入り、最近では市役所とも連携しています。

菅谷 行政と協力して街の魅力を育てていくというのはいいですね。今、国分寺駅のそばに高層ビルが建てられていますが、この低層階には国分寺市役所の分署が入るそうです。元々不便な場所に市役所があることに対し、不動産会社が場所の提供を申し入れ、市も規制緩和や補助金で応じたとのことです。
一方、空室率が高い地域は、街が寂しく感じます。今、日本で一番空室が多い県は山梨県なのですが、これは賃貸需要を無視したアパートの建設が多かったことと、若者の流出により街が高齢化し、家が継承されないことなどが要因です。

学生 私たち学生が、空き家問題に対して何かできることはあるのでしょうか。

菅谷 私がぜひお願いしたいのは「自分の故郷を愛する気持ちを持つ」ことです。自分が育った、お世話になった街を愛していれば、なるべくその街で消費をするようにするとか、街の魅力を発信したいと思うはずです。こうした思いがその街の魅力につながり、住む人を増やしていくのではないでしょうか。

小木 今日のお話で、不動産業界も大きく変わってきていることを痛感しました。今日はありがとうございました。
 

授業を終えて──編集部より

当初、学生の間には「不動産業界は高額な商品を売りつけるというイメージがあり、ちょっと怖い」という印象があったというが、今回の授業で、中古物件を再生したり、管理をしたりする仕事もあると知り、印象が変わったという。小木教授が話すように、不動産業界が大きく変わってきていることを印象づけられた。

小木紀親、 菅谷太一
 

小木紀親(東京経済大学教授) 写真右
1968年、名古屋市生まれ。慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程・博士課程修了後、松山大学、日本福祉大学を経て、現在、東京経済大学経営学部教授。専門は、マーケティング、医療・地域・行政のマーケティング、ソーシャルビジネス。主な著書に『マーケティング・ストラテジー』、『マーケティングEYE』がある。病院・診療所の戦略づくり、さらには地域活性化やソーシャルビジネスに造詣が深い。

菅谷太一(ハウスリンクマネジメント株式会社社長) 写真左
1976年、東京都生まれ。株式会社ミツウロコにてプロパンガスの営業、不動産リフォームに約10年携わり、仙台、埼玉で約500名の大家、約200社の不動産会社のサポートを行なう。その後、武蔵コーポレーション株式会社に転職。約1,000件の賃貸管理、4,500件のリフォーム提案を行ない、賃貸管理、収益不動産のノウハウを学ぶ。2014年、ハウスリンクマネジメント株式会社を設立。宅地建物取引士、液化石油ガス設備士、丙種ガス主任技術者の資格も持つ。

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