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日本に蔓延る「時代遅れ」の働き方、部下に見放されるリーダーとは?

2018年03月30日 公開
2023年01月13日 更新

ムーギー・キム(グローバルエリート/投資家)

 

仕事への情熱を周囲に伝えられているか?

 それに加え、上司が部下に対して示すべきことが「パッション(情熱)」だという。

「リーダーである前に、ビジネスパーソンとして仕事へのパッションを持つことも成功の秘訣です。

 どの国のベンチャーキャピタリストと話していても、投資をするかどうかの最後の判断基準は『パッションが感じられるかどうかだ』と言います。実際にビジネスを始めると、当初のビジネスモデルや市場環境はどんどん変化していきます。そんな中でお金や権力欲、社会的な成功が目当ての人は、ちょっと想定外の苦難に直面すると、すぐに諦めてしまうものです。一方、『どうしてもこの仕事を成し遂げなくてはいけない』というパッションを持っている人は最後までそれをやり遂げようとします」

 パッションとは、好きなこと、やりたいことがベースにあって生まれるもの。そういう意味でも、本当にやりたいことをするのは大切なのだ。

 ただし、人がついてくるかどうかは情熱だけではまだ足りない。周囲を上手く巻き込むには何が必要なのだろうか。

「昨年の衆院選での小池都知事の敗因は、『何が何でもこの政策をやりたい』というパッションの欠如に加え、周囲の支えてくれる人たちへの敬意がなく、都合がいいときに利用しただけだと見透かされたことです。

人は、リーダーが公的な大きなビジョンがなく、単に権力欲しかないと察知したとき、離れていくものです。また、年齢が若いからと言って意思決定に参加させず、決めたことを押しつけているだけでは、今時の優秀な若い人は一緒に働いてくれません。実際に音喜多氏など若い人の離反を招きました。このような時代遅れのリーダーシップスタイルの失敗からは、多くを学ぶことができると思います」

 とはいえ、中には強い情熱を持っていても、その情熱が空回りして、周囲から浮いてしまっているリーダーもいる。

「部下から『あの人、また何か言っているよ。ついていけないんだよな』などと言われないために大切なのは、リーダーがやりたいと思っていることを、『これは自分がやりたいことなんだ』と部下自身に思わせるように、部下を巻き込んでいくことです。『こういうことを実現したいんだけど、あなたならどんなふうにやる?』といった問いかけをし、部下自身に考えさせるように仕向けていくのです。

 部下は上司から命令されれば従いますが、イヤイヤやっているうちは成果は上がりません。でも主体的に考えたことについては積極的に取り組みますし、簡単には諦めません。最初のうちはリーダーだけが『やりたい』と思っていたことを、チーム全員が『やりたい』と思うことに共有できたとき、その物事は実現へと向けて動き出します。

 多くの人が共鳴できるパッションを持っているリーダーの周りには、優秀な人が集まります。その優秀な人たちに対して、いかに適材適所な働く場を与え、意欲や能力を引き出していくかを、常に考えられるリーダーが求められていくでしょう」

≪『THE21』2018年3月号より≫
≪取材・構成:長谷川 敦≫

著者紹介

ムーギー・キム(ムーギー・キム)

投資家、『最強の働き方』『一流の育て方』著者

1977年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA(経営学修士)取得。大学卒業後、外資系金融機関の投資銀行部門にて、日本企業の上場および資金調達に従事。その後、大手グローバル・コンサルティングファームにて企業の戦略立案を担当し、多くの国際的なコンサルティングプロジェクトに参画。2005年より世界最大級の外資系資産運用会社にてバイサイドアナリストとして株式調査業務を担当したのち、香港に移住してプライベート・エクイティ・ファンドへの投資業務に転身。ベストセラー作家としても知られ、近著に、『最強の健康法―世界レベルの名医の本音を全部まとめてみた』(SBクリエイティブ)と、『最強のディズニーレッスン―世界中のグローバルエリートがディズニーで学んだ、50箇条の魔法の仕事術』(三五館シンシャ)がある。

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