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社内政治も思いのままに! 職場で役立つ交渉術6

2018年04月19日 公開
2023年03月23日 更新

荘司雅彦(弁護士)

 

「対部下」で役立つ心理テクニック

提出物の期限を守らせるには「日付を書かせる」のが効果的

 部下に、企画書など提出物の期限を守らせたいときに有効なのが、期限を決めると同時に、日付を部下自身に目の前で書かせる方法。合意した事項を相手の目の前で書くことで、ただ聞いただけのときよりも責任感が増し、約束を破りづらくなります。約束を守るということは、一度決めたことを貫き通そうとする「一貫性の原理」に由来するものです。実際、アメリカのある病院で、次回の予約時間を患者本人に書かせたところ、キャンセル率が激減したという報告もあります。

 書かせた期限を壁に貼り出すとさらに効果的です。とはいえ職場の雰囲気によっては「さらし者のようだ」と感じさせてしまう可能性も。部下のデスクの目につく場所などが無難でしょう。

 大前提として気をつけたいのは、提出可能な期限にすること。行動経済学者のカーネマンとトベルスキーの研究によると、人は一つのタスクにかかる所要時間を、実際より大幅に短く見積もる傾向があるそう。この「プランニングの誤謬(ごびゅう)」を考慮しつつ設定を。部下の設定期限に疑問を感じたら、助言をしてあげるのも上司の役割です。

 

「特別感」の演出で急な依頼もすんなり受け入れられる

 急な案件が発生し、部下にすぐにやってもらわなくてはならない……。そんな急なお願いは、たとえ部下であっても丁重な態度が不可欠。まずは相手に迷惑をかけている、という意識をきちんと持ちましょう。

 そのうえで、相手を「高く評価する」ことが、よりストレスが少なく受け入れてもらえる決め手となります。「申し訳ないが、君にしかできない仕事なんだ」「他の人には頼めないんだ、君の実力を見込んで頼む!」などと言われれば、部下も悪い気はしないでしょう。その際、他の人に聞こえないよう、1対1で言うことも重要です。「君にしか」と限定し、特別感を出すことで、相手の「自己重要感」をくすぐり、急な仕事であっても前向きに取り組んでくれるようになるはずです。

 さらに、この場面では上司に「評価権」があることが有効に働きます。部下の人事評価をする立場である上司から「見込んでいる」と言われたら、部下の中では「今後チャンスが広がるかも?」といった期待が膨らみ、モチベーションも上がるでしょう。

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著者紹介

荘司雅彦(しょうじ・まさひこ)

弁護士

1958年、三重県生まれ。81年、東京大学法学部卒業後、旧・日本長期信用銀行、野村證券投資信託を経て、91年に弁護士登録。刑事・民事を問わず多数の案件をこなす他、執筆業でも活躍。『男と女の法律戦略』(講談社現代新書)はドラマ『離婚弁護士』の原案に。『説得の戦略 交渉心理学入門』(ディスカヴァー携書)など、心理術・交渉術に関する著書多数。

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