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社内政治も思いのままに! 職場で役立つ交渉術6

2018年04月19日 公開
2023年03月23日 更新

荘司雅彦(弁護士)

 

「対部署」で役立つ心理テクニック

複数の部署の了解を一度に得る究極の「根回し」のひと言

 利害関係のある複数の部署の了解を一度に得たい……そんなシーンは度々訪れるかと思います。複数の部署が絡むような大きな案件が話し合われるのは、正式には「会議」ですが、その前に、必ず根回しをしましょう。会議までにだいたいの落としどころを決めておくのが、もめごとを避ける秘訣です。

 根回しの際の殺し文句は、「他の皆さんには、ご同意いただいております」。こう言われると誰しも、自分だけNOとは言いづらくなります。この状態は、社会心理学用語で「ソーシャルプルーフ(社会的証明)」と呼ばれるもの。大多数の人々、もしくは周囲にいる人がしていることが正しい行動だと思うようになり、自分も自然に行ないたくなる心理です。横並び意識が強い日本人には、とくに「よく効く」手段と言えるでしょう。なお、部署同士の仲が悪いときによくあるのが、A部長が「C部長がYESなら俺はNO」などと言い出すパターン。その場合はA部長と仲の良い「B部長にも賛同していただいています」が有効です。友好な関係にある人物には、誰しも反対しづらいのです。

 

他部署から厄介なことを言われたら上司の「縄張り意識」を刺激しよう

他部署の上役から、突然厄介な頼まれごとをされたとしても、自分でなんとかしようとして、その場で引き受けてはいけません。必ず直属の上司に事情を話し、相談しましょう。すると、上司は俄然、部下を守りたくなるもの。これは、上司の「縄張り意識」を刺激するアプローチです。

 人(とくに男性)は、自分の縄張りを侵されることに抵抗を感じます。身近な例で言えば、満員電車で見知らぬ人と接触するときのストレス。これは、自分の身体の周りに持つ「パーソナルスペース」を侵されたことから発するものです。縄張りに踏み込まれる不快感は、動物的な本能なのです。

 まして、部署や課という、自分が仕切っている領域を侵されるとなると、上司の怒りは格別。「俺が話をつけてやる!」と理屈抜きに戦闘態勢に入ります。あとは上司同士のやりとりに任せましょう。「上司とはあまりいい関係ではないが、味方してもらえるだろうか?」という心配は無用。部下との関係性より、縄張りを守る気持ちのほうが上です。むしろ「共通の敵と戦った」ことが、関係改善のきっかけになるでしょう。

≪『THE21』2018年4月号より≫
≪取材・構成:林 加愛≫

著者紹介

荘司雅彦(しょうじ・まさひこ)

弁護士

1958年、三重県生まれ。81年、東京大学法学部卒業後、旧・日本長期信用銀行、野村證券投資信託を経て、91年に弁護士登録。刑事・民事を問わず多数の案件をこなす他、執筆業でも活躍。『男と女の法律戦略』(講談社現代新書)はドラマ『離婚弁護士』の原案に。『説得の戦略 交渉心理学入門』(ディスカヴァー携書)など、心理術・交渉術に関する著書多数。

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