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「アドラー心理学」入門 ストレス社会をサバイブする!

2018年05月02日 公開
2023年03月16日 更新

岸見一郎(哲学者)

「できない自分」を受け入れるには?

 こういう話をすると、アドラー心理学を実践するのは難しい、という感想を持つ方がいます。自分の実力のなさを思い知らされるからです。確かにそうかもしれません。他者や環境のせいにせず、「できない自分」を受け入れるのは、簡単なことではないでしょう。だからこそ、多くの人は「頑張ればできる」「自分はまだ本気を出していないだけ」と口にします。いつまでも、可能性の中に生きていたほうがラクだからです。

 また、他人の評価軸の中で生きてきた人たちは、自分で自分を認めることに慣れていません。他者の承認がなければ、自分を価値ある存在だとは思えないのです。

 ただ、相手が自分をどう評価するかは、あくまで「相手の課題」であって、「自分の課題」ではありません。自分でコントロールできないことをどうにかしようとしても、意味はないので、気にしても無駄です。

 そう考えれば、他人の目から解放され、ありのままの自分を受け入れやすくなるはずです。

 そして、「ありのままの自分」を受け入れたら、次は「今、自分ができること」に集中します。

 人には、「すべきこと」「したいこと」「できること」という3つの課題があり、その中で今すぐに取り組めるのは、「できること」しかないからです。 

 少しでも目標に近づくためには、自分の足元を見つめ、一歩でも二歩でも前に進まないといけないので、とりあえず今日できることから始めましょう。そうやって毎日を積み重ねていけば、理想を現実に変えていくことができるはずです。

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著者紹介

岸見一郎(きしみ・いちろう)

哲学者

1956年、京都府生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専門の哲学(西洋古典哲学、とくにプラトン哲学)と並行して、89年からアドラー心理学を研究。精力的にアドラー心理学やギリシア哲学の翻訳・執筆・講演活動を行なう。著書に『アドラー心理学入門』(ベスト新書)やベストセラーとなった『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)など多数。

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