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「アドラー心理学」入門 ストレス社会をサバイブする!

2018年05月02日 公開
2023年03月16日 更新

岸見一郎(哲学者)

多くの人が幸福を勘違いしている

 ただ、頑張ってはみたけれど、「この仕事はどうしても合わない」「やらされ感が拭ぬぐえない」という方もいるでしょう。本当にそう思うなら、転職してみるのも1つの方法ですが、人生についての見方が同じなら、会社が変わっても同じことが起こるかもしれません。

 ただし、仕事は人生の課題の1つにすぎません。

 アドラーは、人生には「仕事の課題」「交友の課題」「愛の課題」の3つがあると言っています。この3つのバランスが良いことを「人生の調和がとれている」と表現しているのです。

 仕事が忙しく、家族サービスもままならないという40代は多いでしょう。家族を養うために働いていると言われるかもしれませんが、それを、他の課題に取り組めない口実にしていないでしょうか。

 先日、ある企業の研修の場に講師として招かれ、役員会で話をしました。もうすぐ定年という人がほとんどでしたが、「人は働くために生きているわけではない」という話をしたとき、皆さんがぐっと身を乗り出してこられた。恐らく、自分が何となく疑問に感じていたことが、言語化されたことに驚かれたのでしょう。

 仕事において突出した課題があるとき、その課題に集中して取り組むことは悪いことではありません。ただ、仕事さえ頑張って成功すれば、幸せになれるというわけではないのです。多くの人が、成功こそが幸福であると勘違いしています。

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成功は「代替可能」幸福は「オリジナル」 >

著者紹介

岸見一郎(きしみ・いちろう)

哲学者

1956年、京都府生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専門の哲学(西洋古典哲学、とくにプラトン哲学)と並行して、89年からアドラー心理学を研究。精力的にアドラー心理学やギリシア哲学の翻訳・執筆・講演活動を行なう。著書に『アドラー心理学入門』(ベスト新書)やベストセラーとなった『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)など多数。

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