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「アドラー心理学」入門 ストレス社会をサバイブする!

2018年05月02日 公開
2023年03月16日 更新

岸見一郎(哲学者)

質的な幸福が、働き方を変える

 多くの人が質的な幸福を求めて働けば、会社の雰囲気もまた変わるかもしれません。量的な成功ばかりを追求する会社では、疲弊して、誰も働きたくなくなるからです。結果的に、生産性も低くなるでしょう。

 しかし、質的な幸福を求めればどうでしょうか。誰かの役に立っているという「貢献感」が、やりがいを見出すきっかけとなり、仕事がより楽しいものに変わる。結果として、生産性も上がるはずです。

 また、生活のために仕方がなく働くのではなく、嬉々として働いている姿を家族が見れば、家庭にも良い影響が出てきます。そうすれば、ワークライフバランスが、単なる時短を目的とした取り組みではなく、もっと本質的な意味で議論されてくるのではないでしょうか。

 量的な成功ばかり求めていたら、いつかダメになるということに気づいたなら、今から質的なものを求める生き方に変えればいい。

 人に手遅れはありません。変わりたいと思えれば、いつでも変わることができるのです。

 

『THE21』2018年4月号より

著者紹介

岸見一郎(きしみ・いちろう)

哲学者

1956年、京都府生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専門の哲学(西洋古典哲学、とくにプラトン哲学)と並行して、89年からアドラー心理学を研究。精力的にアドラー心理学やギリシア哲学の翻訳・執筆・講演活動を行なう。著書に『アドラー心理学入門』(ベスト新書)やベストセラーとなった『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)など多数。

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