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ビジネス書ベストセラーで振り返る「平成」

2018年05月05日 公開
2022年11月10日 更新

『THE21』編集部

テクノロジーの足音

90年代の世界的なニュースの一つに、大ブームとなった「ウィンドウズ95」の発売がある。1996年のベストセラー1位は『パソコン「超」仕事法』(野口悠紀雄著、講談社)、2位が『ビル・ゲイツ 未来を語る』(アスキー)。その他「PHS」「ISDN」といった今となっては懐かしい響きのする書籍がランキングに入ってくるのを見ると、この頃はまだ「最新の情報は書籍で得る」時代だったことがわかる。

ちなみにその後、こうした書籍がビジネス書のベストセラーとして上がってこなくなるが、これはコンピュータ関連書という別のくくりが生まれたという理由もあるだろう。たとえば98年、99年あたりのコンピュータ書ベストセラーには、ウィンドウズやワードの入門書が上位を占めている。まさにIT化の黎明期といえるだろう。
 

突然の「経済本」ブームのなぜ?

2000年代に入ってからの傾向として、「お金」に対する関心の高まりがある。1999年には『痛快!経済学』(中谷巌著、集英社インターナショナル)が、2000年には『経済のニュースが面白いほどわかる本〈日本経済編〉』(細野真宏著、中経出版)がビジネス書ランキング1位に。他にも数々の経済入門書がベストセラーとなった。なかなか上向かない経済情勢に対し、「そもそもなぜ日本経済は苦境に陥っているのか」を知りたいというニーズが高かったのだろうか。

一方、「勝ち組・負け組」という言葉が象徴するように、お金を稼げる人とそうでない人の格差が拡大。『金持ち父さん貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ著、筑摩書房)を始めとした「マネー本」がブームとなる一方、その流れから取り残された人に向けた『年収300万円時代を生き抜く経済学』(森永卓郎著、光文社)もヒットした。
 

カルロス・ゴーンの衝撃

ちなみに2000年代初頭から急に、外国人著者のビジネス書が軒並み上位に入ってくる。前述の『金持ち父さん貧乏父さん』に加え、『なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣』(ケリー・グリーソン著、PHP研究所)、『ザ・ゴール』(エリヤフ・ゴールドラット著、ダイヤモンド社)などである。

カルロス・ゴーンが日産のCEOになったのが2001年。同年に発刊された著書『ルネッサンス 再生への挑戦』(ダイヤモンド社)もベストセラーとなった。自信を失った日本人が、外から答えを見出そうとしたことが一因かもしれない。その後も翻訳ビジネス書のブームは定期的に訪れている。その理由を分析してみるのも面白いかもしれない。
 

ヒルズ族、起業、そして「株」ブーム

その一方で、若手起業家が続々輩出し、数々の書籍が発刊されたのもこの時期の特徴だ。2003年にオープンした六本木ヒルズにちなみ「ヒルズ族」などと呼ばれた起業家たちの中でも「ホリエモン」こと堀江貴文氏の本は、『稼ぐが勝ち』(2004年、光文社)を始め相次いでベストセラーとなった。

また、『図解 成功ノート』(神田昌典監修、起業家大学著、三笠書房)が2003年のビジネス書ベストセラー1位になるなど、若いビジネスマンを中心に「従来の価値観にとらわれない稼ぎ方」が現われてきたと言えそうだ。

同じく「稼ぐ」という意味では、2004年ごろからビジネス書ベストセラーランキングに株や投資の本が何冊もランクイン。中でも印象的だったのが、『「株」で3000万円儲けた私の方法』(山本有花著、2004年、ダイヤモンド社)。普通の専業主婦が株で一獲千金を実現した体験談であり、多くの人に「自分にもできるのでは?」という期待を抱かせた。

もっとも、こうした動きも2008年のリーマンショック以降は急減速。米企業の企業倫理が問われる中、『日本でいちばん大切にしたい会社』(坂本光司著、あさ出版)がベストセラーになったのは、その反動かもしれない。

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