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【ミドル世代の転職の心得】いざというときのために備えておくべきことは?

2018年06月21日 公開
2023年03月14日 更新

出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)

 

流れ着いた岸でチャンスをつかむには?

 転職や起業というと、綿密な準備を元に進めるべきもののように思える。しかし、出口氏は「自ら望まなくても、そうした機会は自然と訪れるもの」だと語る。

「自分一人で考えた将来予想に基づくキャリア計画など、たかがしれています。人生はもっと大きな人智を超えたものの力で動かされるのです。歴史書や伝記を読むと、それがよくわかります。

 僕は若い頃から『川の流れに流されて生きよう』と考えてきました。それは決して、意思を持たないということではありません。流れている間はそれに身を任せつつ、岸に流れ着いたら、そこにある“機会”を最大限に活かすべく、その場で対応し、瞬時に適切な選択ができるよう集中して判断をする──その機会が訪れた際に、どれだけ柔軟に対応できるか。チャンスをつかめるか否かは、その“変化への適応力”が問われるのだと思います。

 ダーウィンは、『生き残るのは最も賢い者でも、強い者でもなく、変化に対応できる者だけである』と語っていますね。とりわけ現代は先の見えない時代です。働く人は以前にもまして、適応力を試されていると思います」

 訪れた機会を活かせるかどうかは、日頃から準備をしているかどうかで決まってくる。

「一つは常に体力や気力を充実させておくことです。突然のピンチ、あるいはチャンスが訪れたとして、そのとき頭がぼんやりしていたり、ときには二日酔いであったりしたら、ピンチに瞬く間につぶされるし、チャンスも活かせません。

 また、常に多くの知識を蓄え、考える力を磨いておくことも重要です。具体的には『人・本・旅』です。いろいろな人に会って多様な視点や考えるパターンを学ぶ、たくさん本を読んで知識を蓄える、旅に出てさまざまな文化に触れる。多くの経験と発見を得ることが大事なのです。

 僕が迷いなく仕事を辞める決断ができたのも、それまでの『人・本・旅』のおかげであり、本を書いて自分の知見の棚卸しをしていたからだと思います」

 変化への適応力をつけるには、出会った人々や文化の中に、これまで触れてこなかった思考や発想のパターンを見出し、それを真似てみることが有益だという。

「発見したことを実践する、試行する──それは考える力を鍛えることにつながります。その試行錯誤は自分自身の思考に奥行きを与えるでしょう。何が起ころうとも自分の頭で、自分の言葉で物事を考えることができるようになるのです。

 仕事とは直接関係ないことでも、興味のあることをやってみて、いろいろなことを身につけていけば、それが何かにつながっていきます」

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著者紹介

出口治明(でぐち・はるあき)

立命館アジア太平洋大学(APU) 学長

1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業後、72年、日本生命保険相互会社に入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当したのち、大蔵省を担当して金融制度改革に取り組む。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て06年に退職。同年、ライフネット企画〔株〕を設立し、代表取締役社長に就任。08年、免許取得に伴いライフネット生命保険〔株〕に社名を変更。13年、代表取締役会長。17年に取締役を退き、18年1月、立命館アジア太平洋大学(APU)学長に就任。

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