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今さら聞けない「フェルミ推定」。本当の意味とは?

2018年06月12日 公開
2023年03月14日 更新

永野裕之(永野数学塾塾長)

最終的に「ケタ違い」でなければよい

4 推定量の決定
・推定量その1:人の密度

プールでうまく脱力できれば、たいていの人は自然と浮きます。でも溺れてしまうこともあるわけですから、「ギリギリ浮く」と考えていいでしょう。つまり人の密度は水の密度とほぼおなじはずです。水1Lは1kgですから、水の密度は1kg/L です。よって、人の密度も1kg/Lとします。

・推定量その2:細胞の直径の平均

ここが一番の難所でしょう。実際、人の細胞の大きさは千差万別なのですが、細胞1個を肉眼で見たことがあるという人はいないでしょう。肉眼で見えるもっとも小さい大きさは、1mmの10分の1、つまり1万分の1m程度でしょうか。細胞は肉眼では見えませんが、理科の実験などで顕微鏡を使って見たことがある人は多いと思います。顕微鏡の倍率を100倍とすれば、細胞の大きさは1万分の1mよりは小さいけれど、100倍に拡大にすればしっかり見える程度でしょう。よって、細胞の直径の平均は10万分の1m程度ということにします。

5 総合
以上をふまえて人の細胞の総数を以下のように計算します。

結果、人の細胞の総数は7×10の13乗、すなわち70兆個と見積もることができました。

ちなみに人の細胞の総数は長らく約60兆個とされてきましたが、最近の研究では37兆個程度ということがわかってきたようです。いずれにしても70兆個という見積もりはケタ違いではないので良い見積もりだと言えるでしょう。

フェルミ推定の手順をフローチャートにまとめておきます。

(出典:『東大→JAXA→人気数学塾塾長が書いた数に強くなる本』)

著者紹介

永野裕之(ながの・ひろゆき)

「永野数学塾」塾長

1974年、東京生まれ。暁星高等学校を経て東京大学理学部地球惑星物理学科卒。同大学院宇宙科学研究所(現JAXA)中退。レストラン経営、ウィーン国立音大への留学を経て、現在は個別指導塾・永野数学塾(大人の数学塾)の塾長を務める。これまでにNHK、日本経済新聞、プレジデント、プレジデントファミリー他、テレビ・ビジネス誌などから多数の取材を受け、週刊東洋経済では「数学に強い塾」として全国3校掲載の1つに選ばれた。プロの指揮者でもある(元東邦音楽大学講師)。著書に『東大教授の父が教えてくれた頭がよくなる勉強法』『数に強くなる本』(PHPエディターズ・グループ)、『大人のための数学勉強法』(ダイヤモンド社)など多数。

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