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コロンブスがトウガラシを「ペッパー」と呼んだ意外な理由

2018年07月09日 公開

稲垣栄洋(植物学者)

なぜヨーロッパよりもアジアで受け入れられたのか

トウガラシ

トウガラシは英語で「ホットペッパー」。だが、本来の「ペッパー」であるコショウとトウガラシは、形も味も全く異なる。そんなトウガラシが「ペッパー」と呼ばれるようになった背景には、あのコロンブスの苦悩があった!? 植物を通して歴史を見ることの重要性と面白さを説いた『世界史を大きく動かした植物』の著者である植物学者の稲垣栄洋氏に、その意外な理由を教えてもらった。

 

コロンブスの苦悩

コショウは、英語でペッパーと言う。

これに対して、トウガラシは英語で「ホットペッパー(辛いコショウ)」や「レッドペッパー(赤いコショウ)」と言う。また、トウガラシを改良したピーマンは「スイートペッパー(甘いコショウ)」と言う。

そもそもコショウとトウガラシは、似ても似つかないまったく別の植物である。コショウは、コショウ科のつる性の植物である。これに対してトウガラシは、ナスやトマトと同じナス科の植物なのである。

 

アメリカ大陸の発見とコロンブスの「勘違い」

インドを目指してスペインを出発し、大西洋を航海したイタリア生まれの探検家コロンブス。彼は、インドにたどりつくことはできなかったが、その代わりに1492年にアメリカ大陸を発見したのである。

ところが、コロンブスは自分がたどりついたところをインドだと勘違いしたと言われている。そのため、アメリカ大陸にいた先住民は、インド人という意味でインディアンと呼ばれている。また、カリブ海に浮かぶ島々は、西インド諸島と名づけられたのである。

コロンブスの勘違いはこれにとどまらなかった。

コロンブスの航海の目的は、インドからスペインへ、コショウを直接運ぶ航路を見つけることにあった。当時、肉を保存するために不可欠なコショウはアジア各地からインドに集められ、アラビア商人たちの手でヨーロッパに運ばれていた。そして、アラビア商人たちが独占するコショウは、金と同じ価値を持つといわれるほど高価なものだったのである。

そしてコロンブスは、アメリカ大陸で発見したトウガラシを、あろうことかコショウを意味する「ペッパー」と呼ぶのである。

コショウは熱帯産の植物だから、コショウという植物を知らなかったのは無理もない。

実際に、コショウが手軽な調味料である現在であっても、コショウがアサガオのようにつるで伸びる植物であることを知る人は少ないだろう。

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著者紹介

稲垣栄洋(いながき・たかひろ)

植物学者

1968年静岡県生まれ。静岡大学農学部教授。農学博士、植物学者。農林水産省、静岡県農林技術研究所等を経て現職。主な著書に『身近な雑草の愉快な生きかた』(ちくま文庫)、『植物の不思議な生き方』(朝日文庫)、『キャベツにだって花が咲く』(光文社新書)、『雑草は踏まれても諦めない』(中公新書ラクレ)、『散歩が楽しくなる雑草手帳』(東京書籍)、『弱者の戦略』(新潮選書)、『面白くて眠れなくなる植物学』『怖くて眠れなくなる植物学』(PHPエディターズ・グループ)など多数。

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