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「ジャガイモ」を愛したマリー・アントワネットの悲劇

2018年07月11日 公開

稲垣栄洋(植物学者)

南米からやってきたジャガイモが受け入れられるまで

南米原産のジャガイモは、今では世界中で食べられている重要な作物だ。だが、毒があることもあり、ヨーロッパに広まるまでには紆余曲折があった。そして、その普及に一役買ったのが、かのマリー・アントワネットだったという。贅沢の限りを尽くしたというフランス王妃と、「貧民のパン」と呼ばれたジャガイモはなかなか結び付かないのだが……。その理由を『世界史を大きく動かした植物』の著者である植物学者の稲垣栄洋氏が説く。

 

マリー・アントワネットが愛した花

「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」――飢餓の被害を聞いたマリー・アントワネットは、苦しむ国民を尻目に、そう言ってのけたという。そしてマリー・アントワネットは、ついには国民の怒りを買い、フランス革命で公開処刑のギロチンにかけられてしまう。

フランス革命の史実をもとに描かれた漫画『ベルサイユのばら』では、マリー・アントワネットは、宮殿に咲く気高いバラにたとえられている。このマリー・アントワネットがこよなく愛した花があるという。

それは、漫画のタイトルになったバラの花でもなく、『ベルサイユのばら』が連載されていた雑誌の名称だったマーガレットでもない。

彼女が愛した花は、ジャガイモの花だったという。

どうして、高貴な王妃であったマリー・アントワネットがジャガイモを愛したのだろう。

これには深い理由があったのである。

 

ヨーロッパ人が見たこともない作物

ジャガイモの原産地は、南米のアンデス山地である。

コロンブスがアメリカ大陸を発見したことが、ジャガイモがヨーロッパに紹介されるきっかけとなった。ただし、コロンブスは沿岸部を探索していたため、コロンブス自身が山地で栽培されるジャガイモに出合うことはなかった。しかし、アメリカ大陸発見以降、ヨーロッパの人々が南米を訪れるようになり、16世紀にヨーロッパに持ち込まれたのである。

現代のヨーロッパ料理では、ジャガイモは欠かせない。土地がやせていて麦類しか作れなかったヨーロッパにとって、やせた土地でも育つジャガイモは、まさに救世主のような存在だった。今でもドイツ料理に代表されるように、ヨーロッパではジャガイモは欠かせない食材となっている。

しかし、見たことも聞いたこともないアメリカ大陸の作物が、簡単にヨーロッパの人々に受け入れられたわけではなかった。

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ヨーロッパは「芋」向きの土地ではなかった >


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著者紹介

稲垣栄洋(いながき・たかひろ)

植物学者

1968年静岡県生まれ。静岡大学農学部教授。農学博士、植物学者。農林水産省、静岡県農林技術研究所等を経て現職。主な著書に『身近な雑草の愉快な生きかた』(ちくま文庫)、『植物の不思議な生き方』(朝日文庫)、『キャベツにだって花が咲く』(光文社新書)、『雑草は踏まれても諦めない』(中公新書ラクレ)、『散歩が楽しくなる雑草手帳』(東京書籍)、『弱者の戦略』(新潮選書)、『面白くて眠れなくなる植物学』『怖くて眠れなくなる植物学』(PHPエディターズ・グループ)など多数。

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