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「読書が苦手」だった女性社長の「挫折しない本の選び方」

2018年09月07日 公開

諏訪貴子(ダイヤ精機代表取締役)

ページの端を折りそこを集中的に読む

社長として多忙な毎日の中、本の読み方にも工夫をしている。まずはスキマ時間を使った「斜め読み」だ。

「1時間のうち仕事に50分間集中したら、残り10分間を読書にあてる、という方法です。個人的な感覚ですが、自分自身の集中力が続くのは50分間。読書で脳をリフレッシュしたほうが仕事も効率よく進められる気がします。

読み方としては、まずは冒頭からすべて斜め読みします。先ほど『レイアウトに強弱があるといい』と言ったのは、見出しやリードだけ拾って読むことができるという理由もあります。

次に、良いと思った言葉を集中的に読み込んでいきます。そのとき、覚えておきたいページは端を折っておきます。さらに読み直したとき、本気で自分の精神にすり込みたい言葉だと思ったら、そのページに付箋も貼ります」

こうしてスキマ時間で読んだ本のうち、特に良いと思った本については、就寝前にも読むようにしている。

「読み込みたい本は常に寝室の机に3冊ほど置いてあり、寝る前に30分間ほどかけて、端を折った箇所や付箋を貼ったページを読みます。同じ部分を繰り返し読み込み、読後に眠ると、睡眠学習効果で言葉が脳内に定着しやすくなるからです。

眠る前に読書をすると言うと、『眠れなくなるのでは?』と聞かれることもあります。ですが、私にとって就寝前の読書タイムは唯一、リラックスできる時間。仕事から心身ともに離れることができる時間なのです。

『こういう自分でありたい』『このように行動したい』などと共感しながら集中して読むと、自分の中に言葉がなじんでいく感覚を持つことができます。この習慣のおかげで、読書で得た言葉を自然と行動に移せるようになり、自分自身への信頼と自信につながりました」

さらに、気に入った本は何度でも反復して読むことで、記憶を定着させる。

「私は、1冊の本と長くおつき合いするタイプ。多読するよりも、ピンときた本に出会えたら何度でも読み込みます。例えば、迷ったときに背中を押してくれた本である『出会いを生かせば、ブワッと道は開ける!』(中村文昭著、PHP文庫)などは、1年間ほど持ち歩いていつも読んでいました」

 

いい本に出合ったら次は参考文献を読む

知りたいと思う分野について深掘りするために、実践している方法もある。

「より掘り下げた情報を得るために、購入した本に掲載されていた参考文献や引用文献を読むこともあります。専門用語が多く難解な場合もありますが、知識を深めるためには不可欠なステップだと思っています」

一方で、無理をしすぎないことも大切だという。

「名著と言われているビジネス書に挑戦してみたら3ページで挫折したという経験もあるので(笑)、読みづらい本は無理に読まないようにしています。世間で高評価を得ていても自分にとって不要な本だと思えば、取り入れません。

完読までの日数や次に読む本など、細かいルールも決めていません。自分に優しい読書スタイルが、結果として、知識の蓄積にもつながっていると思いっています」

 

仕事に役立てている本

『超訳 論語 「人生巧者」はみな孔子に学ぶ
田口佳史著/三笠書房

経営者としてのあるべき姿を、再度自分の中に落とし込みたいと思ったために読んでいる。原典は難しいが、こうした超訳などの入門書ならスキマ時間にも気軽に読める。

部下育成に役立てている本

『『機動戦士ガンダム』が教えてくれた次世代リーダーシップ』
松山 淳著/ソフトバンククリエイティブ

『機動戦士ガンダム』の登場人物である「ブライト・ノア」や「ランバ・ラル」などのキャラクターをリーダーシップ開発の専門家が検証し、彼らの言動からリーダーとして学ぶべきポイントなどについて解説する。諏訪氏はリーダーシップやマネジメントには様々な形があると考えており、どういうリーダーを目指すかはその人によって違うと考えている。部下である現場のリーダーたちにそれを伝えるためにこの本が役立ったと言う。

『アンガーマネジメント入門』安東俊介著 朝日文庫
『自責社員と他責社員』松本 洋 著 幻冬舎

この2冊は、諏訪氏自身でも読みつつ、部下である現場のリーダーたちに読むように勧めて渡した本。『アンガーマネジメント入門』は、上司として怒りの感情について学んでおくことが必要と考えたため。また『自責社員と他責社員』は、この2つのタイプの部下に対してどう接するかを学び考えてみてほしいという思いから。

 

<『THE21』2018年10月号より>

 

著者紹介

諏訪貴子(すわ・たかこ)

ダイヤ精機〔株〕代表取締役

1971年、東京都生まれ。成蹊大学工学部卒業後、自動車部品メーカーのユニシアジェニックス(現・日立オートモティブシステムズ)入社。98年から2000年にかけて2度、ダイヤ精機に入社するが、経営方針の違いから2度ともリストラされる。04年、父の急逝に伴い、ダイヤ精機社長に就任。経営改革に着手し、10年で優良企業に再生。経済産業省産業構造審議会委員、政府税制調査会特別委員、「日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2013」大賞受賞。著書に、『町工場の娘』『ザ・町工場』(以上、日経BP社)がある。

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