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猛暑を克服する「最強の食事法」

2018年08月29日 公開
2023年03月14日 更新

吉田たかよし(本郷赤門前クリニック院長)

カレー・ウナギ・肉類……夏バテに効く食事とは?

 したがって、胃バテを防ぐには、心身両面のケアが必要です。 ストレス対策でもっとも簡単なのは、背筋を伸ばして胸を張ること。これだけでコルチゾールと呼ばれるストレスホルモンの分泌量が低下します。さらに、意欲を高める脳内ホルモンを増やす効果もあるので一石二鳥です。目じりを下げて笑うのも効果大。前向きな気分になり、脳バテを抑制します。

 身体のケアにおける一番のお勧めは、「カレー」を食べること。辛味成分のカプサイシンは身体の熱を放散させ、体温上昇を防ぐ他、胃粘膜を守るクミンやシナモン、ナツメグなどがカレーのスパイスに含まれています。

 さらに、夏バテ防止食の定番・ウナギは、糖質をエネルギーに変えるビタミンB₁の効果が期待できます。しかし、肉や魚介類にもビタミンB₁ は含まれますので、活力を出すなら土ど 用ようの丑うしの日に限らず、豚肉や魚を毎日食べたいところです。暑くなるこの時期は、冷しゃぶなど良いのではないでしょうか。

 また、何を食べるかと同様に、「どう食べるか」も重要です。キーポイントは噛む回数。唾液と混ぜながら食物を細かく砕いて飲み込むと、胃腸の負担が減るとともに、刺激が脳に伝わって胃の働きが活発になります。まずは20回を目標にしましょう。噛んで「咬筋」を刺激すると、ストレスにも強くなります。

 逆に「悪い食べ方」は、噛まないこと。飲み下すには水分の助けが必要なので、水やお茶で食べ物を流し込みがちですが、これでは胃液が薄まり、消化能力が落ちてしまうのです。

 この水分がビールなら、一層ハイリスク。アルコールは代謝の際に大量の水を消費するので、逆に身体の水分不足は加速してしまいます。それにも増して、最初の一杯を美味しく飲みたいがためにギリギリまで水分を我慢するといった習慣は最悪。習慣化すると、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こしかねません。

 ですから、食べるときは水分に頼らず唾液で飲み下せるくらいまでよく噛むこと。そのためには、食事以外のときに、2時間おきに水やお茶を摂取しておきましょう。

 こうすれば、食事の際に胃液が薄まるのを防ぐことができますし、アルコールによる脱水症状で身体を壊すリスクもぐっと低下します。

 ここまで気をつけても、もし胃バテになったときはどうすべきか。そのときは、朝食をとることから始めましょう。朝食は、その日の胃腸のリズムを作り出す効果が実証されています。

 少量で構いませんし、メニューも好きなものでOK。ただし柔らかいものではなく、「20回噛めるもの」にしましょう。

 この「朝食練習」によって、次第に昼食や夕食もしっかりとれるようになってきます。結果、胃腸の働きが回復し、ひいては脳の働きも活発になるので、仕事のパフォーマンスもアップします。今年は心身ともに健康な夏を過ごしてください。

 

『THE21』2018年8月号

 

取材構成 林 加愛

著者紹介

吉田たかよし(よしだ・たかよし)

医学博士

1964年、京都府生まれ。灘中学校・高等学校、東京大学工学部を卒業後、89 年にNHKに入局。個性派アナウンサーとして『ひるどき日本列島』や野球実況などを担当。NHKを退職後、東京大学大学院医学博士課程修了。本郷赤門前クリニックを開設して院長を務め、受験生を専門に扱う。現在は脳医学や自律神経機能の学習への応用研究に取り組む。著書多数。

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