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素晴らしき「おもてなしホテル」。資金ショートの訳とは?(ルワンダ2)

2018年10月02日 公開
2018年10月02日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(38)石澤義裕(デザイナー)

渋谷が鴬谷に。それがアフリカ


タイル貼り職人。タイルが曲がらないように糸を張りましたが、糸に沿って貼らないのは、どうして?

「おっ!」

思わず声をあげてしまったのが、シャワー室の脱衣カゴ。

便器の上に服を置かなくていいとは! パンツを脱ぎながら、脱帽したものです。

自慢げにいろいろ書き並べていますが、日本人にとっては、どれもこれも取るに足らない「当たり前」ですよね、わかります。

しかしですね、まだまだサービス業とは呼べない世界の民泊事情なのです。

まずもってイチロー選手の出塁率より高い確率で間違っている、地図。渋谷駅近接と宣伝しながら鶯谷くらいの誤差は、指摘しても直しません。

洗濯機使えます!とうたいながら、故障中。

Wi-Fi無料は、料金不払いで不通。

立派なガス台は、ガス欠。

キッチン完備は、水道なし。

タンスに隠れた部屋の照明スイッチ、ベッドを動かさないと使えないコンセント。

電球のないスタンド、紙のないトイレ。

猫すら防げない穴のあいた蚊帳。

そもそも部屋の写真が違うじゃん!

オーナーは親友か!ってくらいフレンドリーでWelcomeを連発しますが、おもてなし感はゼロです。

 

働いても働いても現金を握れないルワンダ人

さまざまなトラップが仕込まれた家が多いなか、壁ごとにコンセントを取り付けた気配りのベダ。

およそアフリカ人らしくない慮る心は、転職を重ねながらも絶妙にキャリアをつなげた賜物です。

技術学校を卒業後、電気工事の資格を得たベダ氏は、奨学金でカメラマンに転身。

写真を扱う延長でデザイナーになり、印刷物から看板まで手を広げて溶接と金属加工を覚え、勢い余って設計士になり、家の施工から家具作りまでつなげた、わらしべ長者的マルチクリエーター。

器用貧乏をこじらせながらも、取得した技術の総結集が民泊です。

資金不足のために、「たかが」ひと部屋に4年もかかりましたが、「されど」のひと部屋になりました。

オープン4ヶ月目にして稼働率が50%を突破。

それなのに、運転資金はショート!

一泊30US$の宿泊料は、手数料として民泊サイトに6US$もとられます。

そしてそしてそして、と3回も唱えたくなるのは、金融機関の手数料。

一回20US$!!!!!

ビックリマークを5つ並べても足りないほどむしり盗られて、彼の手元に届くのはたったの4US$!

脱力~。

これではバナナも満足に食えやしない。

引き出し手数料は一律なので、せめて1,000US$になるまでお預けです。

なんとかならんものかと、ひたすら残念なのです。


ドアの蝶番を直す溶接工。目見当で素手です。熱くないの? 案の定、曲がって付いたので、最後は力技。

著者紹介

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)

デザイナー

1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。新宿にてデザイナーとして活動後、2005年4月より夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。

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