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「アスペルガー社長」はなぜ末期がんを乗り越え、上場を果たせたのか?

2018年10月22日 公開
2020年04月26日 更新

谷口浩(South Pacific Free Bird社長)

末期がんが発覚!それでも「諦めない」

その仕事ぶりがフィジー政府から評価され、現地の国立高校の再建を託されるなど、すっかりフィジーに溶け込んだ谷口氏。2014年にはフィジー国籍も取得した。ただ、そんな谷口氏をさらなる試練が襲うことに。

「ようやく仕事も落ち着いてきて、当時付き合っていた彼女との結婚を考え出した矢先、お腹の張りが気になって病院に行くと、『悪性リンパ腫』というガンの診断が……。しかもステージ4だと言います。最初は10ステージのうちの4かと思っていたのですが、ステージは4までしかないとのこと。つまり、完全な末期ガンでした」

だが、ここでも「諦めない」という谷口氏の力が発揮された。

「入院中、悪性リンパ腫に関するあらゆる論文を日本語・英語で読み漁りました。そこで『イブリツモマブ』という分子標的薬があることを知ったのです。そこで、知り合いの医師と薬剤師を説得し、被験者となり『イブリツモマブ』の治療を受けることになったのです。

ただ、その一方で、僕がいなくなっても会社が存続できるよう、リーマンショックで一度は保留した株式上場の準備も始めました」

 

「アスペ」という特徴は強みに変えられる


闘病中の谷口氏。

結果、治療の成果もあって病状も落ち着き、ついに上場も果たした谷口氏。こうした数々の困難を乗り越えられたのも、自分がアスペルガーだったからだという。

「アスペルガー症候群の人は、何かが抜け落ちていることが多いのですが、僕の場合は忘れるという機能と諦めるという機能が抜け落ちています。ただ、『諦めるという機能』が付いていないからこそ、どんな困難の中でも諦めずに進んでこられました。

そう考えれば、何かが抜け落ちているというのは、むしろ長所になる。実際、僕はアスペルガーというのは、一種の進化だと思っています。その特徴を活かすことができれば、どんな場所でも成功することができるのではないでしょうか。

そして、『諦める』ことが機能の一つだと考えれば、誰でも『諦めるという機能』をオフにすることができるはず。困難に直面したとき、『諦めるというスイッチをオフにする』というように考えてみてはいかがでしょうか」

著者紹介

谷口浩(たにぐち・ひろし)

South Pacific Free Bird(株)代表取締役社長 / Free Bird Inst

1972年福井県生まれ。高校卒業後、中国政府のスカラシップを活用し、上海の同済大学に入学。4年の時に中退。その後香港の不動産会社、タイの建築会社に勤務。1997年、アジア経済危機の影響で帰国。父が経営する建設会社に入社するも1年半で辞職。その後石川県金沢市にて、外国人研修生向けに日本語教育などを手掛け、国内企業への人材提供を主な事業とする協同組合を設立。4年間で売上高3億8000万円の規模まで成長させたのち退任。2004年、フィジーでの語学学校の運営を柱としたSouth Pacific Free Bird株式会社を設立。2010年にはフィジー政府から依頼され、底辺高校の再建に着手。日本人生徒の受け入れも始める。
これまでに受け入れた留学生はのべ2万2500人以上。2016年にはステージ4の末期がんを宣告されるが、その後もフィジーで学生のために尽力する日々を送っている。2017年2月2日、南太平洋証券取引所に上場。

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