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プロ経営者は、どうやってプレッシャーに打ち勝っているのか?

2018年12月13日 公開
2023年03月14日 更新

岩田松雄(リーダーシップコンサルティング社長)

 

「心の弾性」を察知しておく

 心の傷は「弾性の限界」を超えたときにつくと、岩田氏は語る。

「心の弾性の範囲内なら、ストレスでグッと曲げられても、元に戻ります。しかし、弾性の範囲を超えれば、ポキリと折れて、つなぎ合わせても傷が残る。

 私は、どうしても留学したいと頑張りすぎたのでしょう。もっと早く手を打てば、折れなくて済んだかもしれません。

 ビジネスパーソンは、自分の心の弾性限界(耐性)を、おぼろげながらでも察知しておくことが必要でしょうね」

 生真面目で自分を追い込みやすい人は特に要注意だ。

「日頃から『真面目で自分に厳しすぎる』と言われている人は、人一倍意識すべきです。理性が働かなくなって『頑張る』以外の選択肢が見えなくなる、『誰も助けてくれない』と思い込む、という状態は黄信号です」

 岩田氏も、当時は「こんなに苦しんでいる自分に誰も気づいてくれない」と思い込んでいたという。

「落ち着いて考えてみれば、当然です。他人には関係のないことですから。でも、助けを求めれば、何かアドバイスやヒントもらえたと思います。

 ともすれば弱みを見せたくないとプライドが邪魔しますが、思い切って白旗を上げるのも一つの勇気です」

 

一歩引いて見ればつらさは軽減される

 人事権のある経営者とは違い、普通の会社員は「逃げられない状況」のプレッシャーに曝されやすいと、岩田氏は指摘する。

「自分では変えられない状況に縛られることは、強いストレスを生みます。上司との関係が、その典型でしょう」

 かつての岩田氏も相性の悪い上司に悩んだが、今から振り返ると、当時とは違った見方ができるという。

「そもそも、『逃げられない』というのが思い込みなんです。上司も自分も、たいていは4~5年で異動するもの。とすると、2~3年も待てばどちらかが異動して、ストレス源と離れられるわけです。終わりがある、期限つきのストレスだと気づけば、ラクになります。

 それでもつらければ、辞めればいい。実際には辞めないにしても、辞めるという選択肢があることを念頭に置くだけで、かなり違います。そのために、年収1年ぶんの貯金をすることを若い人に勧めています。

 折れてしまわないためには、逃げ道を用意しておくことが、とても重要です」

 余裕ができれば視野が広がり、上司に対する見方も変えられるようになる。

「少し距離を置いて状況を眺めると、『上司にも色々とつらい事情があって、こんな振る舞いをしているのかも』といった想像力が働きます。気持ちとしては上司を『上から目線』で眺め、『この人は何を求めているのか』を考えてみるといいと思います。

 上司自身が、その上の上司と折り合いが悪いのかもしれない。業績アップのプレッシャーがきついのかもしれない――。そうした視点転換が、つらさを軽減します」

 

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著者紹介

岩田松雄(いわた・まつお)

〔株〕リーダーシップコンサルティング代表取締役社長CEO

1958年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、日産自動車〔株〕入社。UCLAアンダーソンスクールに留学。その後、外資系コンサルティング会社などを経て、〔株〕アトラス代表取締役、〔株〕イオンフォレスト(ザ・ボディショップ)代表取締役社長などを歴任。スターバックス コーヒー ジャパン〔株〕CEOに就任すると、業績を右肩上がりに成長させ、2010年には過去最高売上げを達成する。『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』(サンマーク出版)など著書多数。

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