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「リモートワーク」成功の秘訣とは?シリコンバレーから東京のオフィスを経営する起業家に聞く



2018年10月27日 公開

楠山健一郎(プリンシプル社長)

 

リモートワーク成功のカギは「企業理念の浸透」


東京本社での朝会の様子。この写真は楠山氏が一時帰国しているときのもので、ロボットは使っていない

 

 社長以外の社員も、原則として週1回、リモートワークが認められている。マネージャー主催の全社会議が行なわれる木曜日はほとんどの社員が出社する一方、半数ほどしか出社しない曜日もあるため、社内のイベントなどは木曜日に開催するケースが多いという。

「私は、トムソン・ロイターグループという外資系企業に、これまでのキャリアで最も長い約10年間も勤めていました。それだけ肌に合っていたのです。そこでは、給与は働いた時間に対してではなく、パフォーマンスに対して支払われるという考え方でした。私も、その通りだと考えています。

 パフォーマンスを最大化するためには、オフィスに来たほうがいい場合と、来ないほうがいい場合があります。例えば、社員間で綿密な打ち合わせが必要であれば出社したほうがいいし、個人がやるべきタスクが決まれば、自宅のほうが仕事を進めやすいこともあるでしょう」

 そもそも、リモートワークは、プリンシプル創業以来の文化だとも、楠山氏は話す。

「起業した当初の事業は〔株〕プレジデント社のWEBサイト『プレジデントオンライン』の立ち上げで、プレジデント社の社内に3つ席があっただけです。オフィスはありませんでした。他の仕事も受注するようになって人手が必要になっても、正社員は雇わず、フリーランスの人たちにお願いしました。普通は、起業したらオフィスを構えて、人手が必要になれば正社員を雇うのでしょうが、その常識に従わずにどこまでできるのか、やってみたかったのです。

 やってみると、10人くらいのチームになるまでは、問題なく経営できました。フリーランスの人たちであっても、同じプロジェクトのもとに集まってきてくれた人たちであれば、社員と同じようにチームとして働いてくれたのです。

 ただ、10人を超えてくると、きちんとしたオフィスでお迎えしなければならないお客様ができたり、総務や人事など、オフィスで仕事をしたほうがパフォーマンスを高められる業務も多くなったりしてきたので、オフィスを構えることにしました」

 リモートワークを導入すると、社員の一体感が失われるのではないか。そう危惧する人も少なくないだろうが、企業理念が浸透していれば問題ないという。

「当社では、企業理念や行動規範などをまとめた『PRINCIPLE WAY』という小冊子を作っていて、全社員が持っています。ザ・リッツ・カールトンのクレドのようなものですね。『ビジョナリー・カンパニー』(ジム・コリンズ著)にも書かれているように、個人のパフォーマンスを重視する外資系企業でも、成功している企業は理念を大切にしています。

 朝会を行なっているのも企業理念を浸透させることが目的で、行動規範に結びつけて近況を話すスピーチもしています。リモートワークをする社員も、パソコンを通じて、朝会に参加しています」

 マネージャーとチームメンバーとの1on1(1対1での面談)も月に1度行なっており、社長である楠山氏も、3カ月に1度、社員と1on1を行なっている。また、企業理念に合った人だけが入社するよう、採用も慎重に行なっているという。

「リモートワークを認めるためには、社員の細かい行動まで管理しようとせず、社員を信じて割り切ることが必要です。それができるのは、社員が主体的に考え、自ら行動するから。別の言い方をすれば、内発的モチベーションで仕事をしているからです。

 リモートワークを廃止した大手IT企業がいくつかありますが、それは、ラクをして儲けたいと考える社員が増えてしまったからではないでしょうか。

 ですから、採用では、自分がやりたいことを言語化できている人だけに入社してもらうようにしています。前の職場の人間関係がイヤだから転職したいという人はもちろん、経営方針に納得できないから転職したいという人も採用しません。経営方針に納得できないのなら、昇進して、自分で経営方針を変えればいいわけですから、それは他責の考え方だと思います」


楠山健一郎氏

 

 現在、プリンシプルは米国のNASDAQへの上場を目指している。

「私は、〔株〕サイバーエージェントで一社員として上場を経験し、〔株〕オークファンでは執行役員として上場に携わった経験があります。それを踏まえて、大義なき上場なら、しないほうがいいと考えています。

 プリンシプルについては、もともと上場する考えはまったくありませんでした。ところが、『PRINCIPLE WAY』にも載せているように、『2027年、世界中に拠点があり海外売上比率50%を突破するグローバル企業になる。グループ売上300億円、グローバルで総員400名体制』というビジョンを明確化させた際、ニューヨークの投資家に、世界を目指すならNASDAQに上場すべきだと言われたのです。

 NASDAQに上場するためには相当な規模の企業でなければならないというイメージを持っていましたが、調べてみると、もう少しで手が届くことがわかりました。

 NASDAQに上場すれば、世界各地の現地企業のM&Aがしやすくなり、ビジョンの実現を早められます。また、給与の一部をストックオプションにすることで、採用市場でも有利になります。そこで、NASDAQ上場を目標に掲げることにしました。

 インターネット広告市場は世界で26兆円もあり、まだまだ成長を続けています。当社は、データ解析という強みをもとに、コンサルティングだけでなく、実際にクライアントのマーケティング活動を支援する実行部隊も持って、その市場を取りに行きたいと考えています」



著者紹介

楠山健一郎(くすやま・けんいちろう)

〔株〕プリンシプル代表取締役社長

1973年生まれ。埼玉県出身。96年、国際基督教大学を卒業後、シャープ〔株〕に入社。その後、〔株〕サイバーエージェントを経て、2001年にトムソン・ロイターグループに入社し、07年、メディア事業部門の日本責任者に就任。10年、〔株〕オークファンに入社し、執行役員に就任。11年、〔株〕プリンシプルを設立。16年、家族とともにシリコンバレーに移住。

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