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難解な本は最初に 「あとがき」から読もう

2018年10月29日 公開
2023年03月14日 更新

鎌田浩毅(京都大学教授)

理解できない言葉は棚上げして読み進める

 では、難しい本はどんな読み方をしたらよいでしょうか。デカルトの『方法序説』を例に解説していきましょう。

 まずは、「あとがき」から読んでください。いきなり本文から読み始めてはいけません。

 なぜなら、あとがきはその分野の第一人者が書籍の概要や、著者の思想的バックグラウンド、時代背景などをわかりやすく解説しているからです。

 あとがきから読むことで、『方法序説』が、400年前にフランス人が書いた近代哲学・自然科学の古典であることがざっくりとわかるでしょう。

 続いて、文中で繰り返し使われる言葉をピックアップしながら読んでいきます。著者の言葉をフォローしながら読み進めることで、著者の考え方や思考パターンが次第に掴めてきます。

 ここで重要なのは、わからない言葉があっても、すぐに辞書を引かないことです。文脈から著者が使用する言葉のイメージを推測しましょう。

 なぜなら、言葉が持つ本来の意味と、文中で使用される意味合いがしばしば異なる場合があるからです。

 意味を推し量れない言葉が出てきても、立ち止まらずに読み進めてください。わからない箇所を棚上げして先に読み進めると、何度も同じ言葉が出てくるので、より多くの文脈から意味を推測することができます。

 特に、難解な書籍は全体を読んで初めて部分的な理解が進むケースが多いのです。

 むしろ、棚上げしないで、わからない部分に拘こう泥でいすることが、読書で挫折する原因になってしまいます。もう少し読み進めればわかるかもしれないのに、非常にもったいないことです。

 理解してからでないと先に進んではいけないという強迫観念を捨て去ることが、難しい本を読破する最大のコツなのです。

 実は、この方法は英文を読む際にも役立ちます。読み飛ばしてもわかる箇所をつなげて読んでいけば、ぼんやりと全体を理解できるようになるのです。

 すべてを理解しようと思わずに、理解できる範囲だけを取り入れれば十分だと考えましょう。こうした「不完全法」を使うだけで読書に挫折しなくなります。

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著者紹介

鎌田浩毅(かまた・ひろき)

京都大学教授

1955年生まれ。東京大学理学部卒業。通産省を経て97年より京都大学教授。専門は地球科学。テレビや講演会で科学を解説する「科学の伝道師」。京大の講義は毎年数百人を集める人気。著書に『地震と火山の日本を生きのびる和恵』(メディアファクトリー)、『火山と地震の国に暮らす』(岩波書店)、『火山噴火』(岩波新書)『もし富士山が噴火したら』『座右の古典』『一生モノの勉強法』(以上、東洋経済新報社)など。

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