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「家づくりの匠」の仕事の流儀は「一歩進んで二歩下がる」?(ルワンダ3)

2018年11月08日 公開
2023年03月14日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(39)石澤義裕(デザイナー)

自分のミスでも完全なる他人事

後日、

「おや?」

腕を組んでつぶやいたのは、窓を作った建具屋さん。

「あれ?」

メジャーを取り出したのは、寝室のドアを作った建具屋さん。

窓とドアが、収まるべき開口部に収まりません。

採寸したところ、犯人はまたしても左官屋です。寸法が違うのです。

再び、左官屋のオヤジが呼び出されます。

今度こそ、施主のカミナリが落ちるかと耳を塞いで待っていたのに、

「窓とドアが入らないんだわ……」

…………。

…………。

えっ、そんだけ?

再犯ですよ、彼。

「2~3cmほど壁を削れば、なんとかなりますね」

しれっと言う左官屋。

なんとかなりますねって、あんた、なんなのその他人事みたいな口調。

ぜんっぜん反省の色がないどころか、どちらかというと問題解決の糸口を見つけたコンサルタントみたいな顔してないですか?

施主に代わって、完膚なきまでにクレームの丈を叩きつけたいのを胃の腑にとどめ、唇を噛む筆者です。


どうしても入らない窓。

 

ミスをしようがやり直そうが「日当」は発生

施主、なんかおかしくないですか?

もしかして、左官をやり直すたびに日当を払ってるんじゃないですよね?

「もちろん、日当は払います」

もちろん払いますって、だって、セメント代はかさむし、スケジュールは遅れるし、よく黙ってられますね?

「それは……、しかたないです。そもそも日当は安いですから」

「間違ったからといって、無料で働け!とは言えません」

人間だもの……、みたいなことを言ってますが、それってすごくないですか?

給料が安ければ、それだけクオリティが落ちるという当たり前すぎる費用対効果。

気持ちはわかるけれど、誰ひとり理解しないというか、支払いたくない総論OK各論反対の理屈です。

政府主導で残業代を削り、ボランティアとインターンという魔法の言葉でやりがいすら窃取する国に、厚生労働大臣としてお招きしたい御仁です。

ルワンダ
反省の色なく壁を壊す左官屋。

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著者紹介

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)

デザイナー

1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。新宿にてデザイナーとして活動後、2005年4月より夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。

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