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「事件取材×IT」という自分の強みの発見が、フリーランスへの道を開いた

2019年01月22日 公開

佐々木俊尚(作家/ジャーナリスト)

「バカだな」と言われても、41歳で大手新聞社を辞めた理由とは?

 


佐々木氏が在籍していた頃の『月刊アスキー』

 

 ITの最新の動向をウォッチし続け、それがもたらす新しい社会でのライフスタイルの提言も続けている佐々木俊尚氏。40代になってからフリーランスになった佐々木氏は、なぜ活躍することができているのか。大企業を辞めてから独立するまでの経緯について、話を聞いた。

 

 大学卒業後、毎日新聞で12年間、記者をしたあと、1999年にアスキーに転職しました。マスコミ不況になった今でこそ少なくありませんが、当時は新聞社を辞める人はほとんどいなくて、周りから「バカだな」と言われたものです。

 でも、そのままいたら、管理職になって現場を離れてしまう。私は現場取材を続けたかったので、辞めることを決めました。

 アスキーに転職したのは、フリーランスになる前に、仕事をもらえるようにしておくためです。

 フリーランスになったら、初めは古巣から仕事をもらうことになりますが、新聞社は、写真もイラストも、もちろん記事も、すべて内製していますから、外部のフリーランスに仕事を発注しません。そこで、仕事を外注している出版社で仕事をしてから独立しようと考えたのです。

 出版社の中でもアスキーを選んだのは、コンピュータについて他の人よりも詳しい自負があったからです。ところが、いざ入社してみると、私よりもコンピュータに詳しい人たちがたくさんいました。その中で、自分の強みになるのは何か。それは、新聞記者時代に鍛えられた取材力でした。

 警察が会見では言わないネタを取るために、刑事の家に夜討ち朝駆けをする。殺人事件の犯人の家に突然行って、インターホンを押す。新聞記者時代は、そんな「裏口」の取材をするのが仕事でした。

 一方、アスキーでは、企業の発表会に出席したり、社長にインタビューをしたりという、正面からの取材しかしていませんでした。

 そこで私は、IT関連の事件を独自に取材することにしたのです。

 例えば、月間何百万通という迷惑メールを送っているサーバーがあることが話題になっていて、その存在は記事になっていたのですが、実際に現場に行って取材をした人はいませんでした。そこで、IPアドレスからサーバーの所在地を調べると、なんと銀座の立派なビルだとわかり、その住所にアポなしで行って、サーバー管理者に話を聞いたりしました。

 当時はITバブルの時期で、次々と現れたIT起業家の中には事件を起こす人もいました。そうした事件の取材などもして、他社の媒体にも記事を書きました。ITに詳しい事件記者として、週刊誌から仕事が来たこともあります。

 そうして、インプレスの『インターネットマガジン』などで連載を持てるようになり、収入の目処が立ったところで、フリーランスになりました。41歳のときです。

 独立した直後は、ファイル共有ソフト『Winny』の開発者が逮捕された事件など、やはりIT関連の事件を中心に取材をしていましたが、徐々に事件取材は減らしていきました。本当に興味があるのは、ITによって社会がどう変わるのかを知ることだからです。

 今は、自分の興味に従って、現場の最前線で取材を続けています。それができているのは、フリーランスになるというターニング・ポイントを経たからこそです。

 

《『THE21』2019年1月号より》



著者紹介

佐々木俊尚(ささき・としなお)

作家/ジャーナリスト

1961年生まれ。兵庫県出身。〔株〕毎日新聞社などを経て、2003年に独立し、テクノロジーから政治、経済、社会、ライフスタイルに至るまで幅広く取材・執筆している。『キュレーションの時代』(ちくま新書)、『広く弱くつながって生きる』(幻冬舎新書)など、著書多数。電通総研フェロー。

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