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「イノベーションを起こすなら、自ら陳腐化させよ」ドラッカーに学ぶ、これからの経営に必要な考え方〈後編〉

2019年02月17日 公開
2023年03月10日 更新

山下淳一郎(トップマネジメント代表取締役)

 

イノベーションを生み出す「仕組み」を作ろう!

 イノベーションを起こすためには、「予想外のお客様からの要望」を聞き出し、吸い上げていただきたい。しかし、「よし、実行しよう!」と思っても、翌日には忘れてしまったり、これまでの会社のやり方があるために実行できなかったりするのが現実だ。

 では、着実に実行していくためには、どうすればいいか。上司や同僚と目的を申し合わせたうえで、あることを行なっていただきたい。ドラッカーはこう言っている。

「まず行なうべきことは、予期せぬ成功が必ず目にとまる仕組み、注意を引く仕組みをつくることである」

 ある会社では、先に挙げた「〈1〉予想外にうまくいったこと」を報告書に書いてもらうようにしている。報告書を書く社員は、毎回「特になし」とは書きにくいものだ。何かそれなりのことを書かざるを得なくなる。結果として、物事を「予期せぬ成功」という目で見るようになる。

 すると、経営者の立場で言えば、必要な情報が現場から上がってくるようになるし、現場の立場で言えば、必要な情報を経営者に上げられるようになる。組織の風通しが良くなり、現場で起こっていることやお客様の生の声が経営者に届くと、本来組織が持っている「お客様にお応えする力」が発揮されて、お客様の満足度が上がっていく。

 イノベーションと言うと、言葉の響きから、派手な改革をイメージしてしまいがちだが、実は、日常の地道な取り組みの中にこそ、イノベーションがある。では、今日、具体的に何から行なえばよいのだろうか。それは、「まず行なうべきことは、予期せぬ成功が必ず目にとまる仕組み、注意を引く仕組みをつくることである」に尽きる。

著者紹介

山下淳一郎(やました・じゅんいちろう)

トップマネジメント〔株〕代表取締役

ドラッカー専門のマネジメントコンサルタント。東京都渋谷区出身。外資系コンサルティング会社勤務時、企業向けにドラッカー理論を実践する支援を行なう。中小企業役員と上場企業役員を経て、ドラッカーの理論に基づく経営チームのコンサルティングを行なうトップマネジメント〔株〕を設立。現在は、上場企業に「後継者育成のためのドラッカーの役員研修」「経営チーム向けのドラッカーのトップマネジメントチームプログラム」「管理職向けのドラッカーのマネジメント研修」を行なっている。著書に『日本に来たドラッカー 初来日編』『新版 ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方』(ともに同友館)、『ドラッカー5つの質問』(あさ出版)などがある。

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