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「親から習った金融知識」はいったん、忘れよう

2019年02月19日 公開
2023年03月10日 更新

鈴木隆史(日本私産運用協会代表理事)

マネーリテラシーをどう高めるか

「日本人にはマネーリテラシーが足りない」とはよく聞く言葉だ。その理由として、「情報のアップデートができていない」ことを主張するのが、社会人に対するマネー教育に携わる「日本私産運用協会」の鈴木隆史氏だ。では、正しい金融知識を手に入れるためにはどうしたらいいのだろうか。

 

お金の考え方は「アップデート」が必要

「お金は卑しいものである」……そんな感情が、江戸時代以来根強く、日本人の中に残り続けています。その後、明治、大正、昭和、平成と時代は変われど、この考えは変わっているように思えません。衣食住や働き方などは高速に変化し、人々の考え方もそれに伴って変化しているのに、なぜかお金への考え方は昔のままなのです。

その結果、お金について学校でしっかりと習うこともなく、マネースクールの数もまだまだ少ないのが現状です。

本来は他の知識と同様、お金の知識もどんどんアップデートしていく必要があります。にもかかわらず、「お金の常識」が、古いままずっと残ってしまっているのです。

私たち日本私産運用協会は、正しい金融知識をより多くの人に身につけてもらうべく活動しています。お金についての知識や経験も含め、すべてが大事なプライベートアセットだと定義し、資産ではなく「私産」と表現しているのも、それだけ「知識」が重要だということです。

私たちは正しい金融知識を身につけるステップを「知る」「作る」「増やす」「活かす」の4つにわけてお伝えしていますが、その中でも今回は「知る」ことの重要性についてお伝えさせていただきます。

 

「お金を預けるなら銀行が正解」だった時代

親からこんなアドバイスを受けた方もいるのではないでしょうか。

「預けるなら郵便貯金や銀行が一番」
「将来のために貯金をしっかりしなさい」
「海外は危ない。日本が安全」

そして、それをそのまま信じている方も少なくないでしょう。

確かに、「かつての日本」では、この考え方でもお金を増やすことはできました。ただ、「現在の日本」では、これはまさに「アップデートされていないお金の知識」の代表です。

高度成長期を経てバブルが弾けた1991年の前後で、日本は大きく変化をしています。

2018年12月現在のメガバンクの普通預金は年間金利0.001%、定期預金で0.01%。つまり、100万円を1年預けても、定期でも100円しか増えません。ATM手数料1回分よりも少ないですね。

一方、1970年代の郵便貯金の定期預金は金利8%を超えていました。「10年定期で金利11.9%」というものすら存在していました。つまり、100万円を1年預けるだけで、8万円~11万円増えるということです。「預けるなら郵便貯金や銀行が一番」というのは、まさにその通りだったのです。

1970年台に郵便貯金で定期預金していた方が、もし現代にタイムスリップしてきたら、今のメガバンクの金利に対して大きな不満を持つでしょう。

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著者紹介

鈴木隆史(すずき・たかし)

日本私産運用協会代表理事

明治大学商学部卒業。食品(飲料メーカー)の営業と開発、青果物商社の営業マネージャーを経て、現在はファイナンシャルコンサルティング企業で活躍する。
20代後半にビジネスにチャレンジするも失敗。クレジットカード7枚のリボルビング払いまで手を出し、一時は借金返済のためにトリプルワークを経験。自身がお金に関して何も知らなかったので、これから私産について勉強していく方々に分かりやすく伝えたいという想いが強い。子供向けファイナンシャル教育の底上げのためにも、まずは大人から基礎を学ぶ必要があると考えている。
日本私産運用協会の理念に共感し、2013年に協会認定講師資格である私産運用プランナーに合格。以降、協会の講師とし公演活動を行う。ファイナンシャルプランナーの有資格者でもある。協会の理念を深く理解し、分かりやすく正確に伝えるその姿勢は、協会を代表する私産運用プランナーとして称賛を得ている。
2015年より日本私産運用協会の代表理事に就任。また同年にファイナンシャルカンパニー日本法人の代表に就任。日本私産運用協会(http://j-pama.org/)

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