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なぜ「シアトル」は、有名大企業のメッカになったのか?

2019年02月21日 公開
2023年01月25日 更新

石塚しのぶ(日米間ビジネス・コンサルタント/Dyna-Search, Inc.代表)

「土地の文化」が企業の躍進力につながる

人材プールと税制における優位性。これらがアマゾンを筆頭に、特にテクノロジー(ネット)企業がシアトルに集中する「明らかな」理由である。しかし、見落としてはならない隠れた要素がもうひとつある。その土地の文化である。

新しい会社を立ち上げようというとき、常識や慣習からの逸脱を恐れない自由な発想と奔放な創造性が要求される。シアトルは古くから音楽と芸術の町であり、90年代にはニルヴァーナに代表される「グランジ」 という新しいムーブメントを生み一世を風靡した。加えて、市の25歳以上の人口の約半数が「大卒」という、米国全体の水準をはるかに超える学歴の高さを誇る土地でもある。

また、マイクロソフトが80年代以降に全世界から優れた人材を集めたことで、地域に住む多くの人が他の土地からの移住者であり、異文化に寛容で多様性を排除することのない、包容力に富む文化が育まれた。

会社や事業は人々のライフスタイルや価値観と密接に結びついていて、切り離すことができない。その土地の「文化」の豊かさは会社という共同体を育む肥やしにもなるのだ。今後、日本において世界に通用する企業や産業エリアを育成していくうえで、ぜひ参考にしてほしい。

 

<『THE21』2019年3月号より>

著者紹介

石塚しのぶ(いしづか・しのぶ)

日米間ビジネス・コンサルタント/ダイナ・サーチ、インク代表

南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で 経験を積んだあと、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイ ナ・サーチ、インク(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに 設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。近年は、ソーシャル・メディア時代に対応する経営革新手法として、「コア・バリュー経営」を提唱。執筆・講演なども精力的にこなしている。
主な著書に、『アメリカで「小さいのに偉大だ! 」といわれる企業の、シンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡改訂版~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る~コア・バリュー経営~』(東京図書出版)など。

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