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4月1日より施行!「働き方改革関連法」で何がどう変わる?

2019年02月25日 公開
2023年03月10日 更新

布施直春(人事・労務コンサルタント)

第一のポイントは「長時間労働の是正」

さて、「働き方改革関連法」による改正内容は細部まで含めればいろいろあるのですが、全体像を概観すると、以下の三つの方向性に分けられます。

一つは「長時間労働を是正し、しっかりと休暇を取れるようにする」ための改正。「働き方改革」のイメージと最も重なるところです。

まず、時間外・休日労働の上限が決められるとともに、それを守らない企業には罰則がつくという法改正が行なわれました。具体的には、時間外・休日労働協定(36協定)に「特別条項」を結んだとしても、

A 時間外労働と休日労働の合計が、1カ月で100時間未満
B 時間外労働と休日労働の合計が、2~6カ月平均ですべて1月あたり80時間以内
C 時間外労働が、1年間で720時間以内
D 特別条項の適用は1年間に6カ月まで

が、上限として定められました。

また、年次有給休暇(年休)の取得率を高めるための改正も行われました。具体的には、1年間に新たに10 日以上の年休を取得できる労働者に対し、そのうち5日の年休については、会社側が時季を指定して取得させることが義務化されました。つまり、強制的に年休を取らせなくてはいけなくなったのです。

また、時間外労働には割増賃金が発生するものですが、特に月60時間を超える時間外労働については、割増賃金率を50%以上にするよう定められています。

ただし、中小企業に関しては経営への影響を考え、その実行が猶予されていました。ただ、2023年からはそれが許されなくなります。これも言ってみれば「残業時間を減らすための施策」です。

 

賛否両論あった「高プロ」制度

もう一つのポイントが、「多様で柔軟な働き方を可能にする」ための改正です。

以前の日本では、毎日同じ時間に会社に行き、定時を過ぎたら帰る、という働き方が一般的でした。また、仕事の成果も労働時間と連動する傾向がありました。しかし、最近は仕事の内容が多様化したことで、これらの常識が当てはまらなくなるケースが増えてきています。

たとえば、工場のラインで製品を作る仕事ならば、時間と成果はかなりの程度比例すると言えます。一方、コンサルタントや商品開発のような仕事は、時間をかけようがかけまいが、その結果や制作物の評価によって仕事の成果が決まります。仕事の量と成果はある程度は比例しますが、時間をかければかけるほど成果が高まるとは、必ずしも言えません。

そして現在の日本では、後者のような仕事の割合が増えつつあります。そのため、時間よりも成果で業績が判断されることが一般的になりつつあるのです。

そうした背景を踏まえ、導入が決まったのが「高度プロフェッショナル制度」、俗に言う「高プロ制度」です。

これは、一定の条件を満たした労働者に関して労働時間や時間外・休日割増賃金等の規定を適用除外とするもので、一見、前述の労働時間の上限設定と矛盾するようにも思えます。実際、「残業代ゼロ法案だ」とか「過労死を促進する」というような批判があったのも事実です。

ただ、「時間を自由に使える」「短時間で成果を出せばむしろ、労働時間は短くなる」というメリットがあることは事実で、うまく使うことで会社にとっても働く側にとっても便利なシステムになり得ると考えられます。

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