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影響力を高める「スピード仕事術」とは?

2019年03月05日 公開
2023年03月10日 更新

出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)

 

「影響力=仕事量(アウトプット)×スピード(時間)」

 仕事(アウトプット)は、上司を含めて相手にインパクトを与えることが求められます。

 相手に与えるインパクト(=影響力)を大きく、強くするには、スピードを上げることです。スピードは、その人の生産性を決定づける重要な要因です。

 物理の法則で考えると、運動エネルギーは「質量×スピード」で決まります。重いものが速いスピードでぶつかると、大きな衝撃になる。この法則は、仕事にもそのまま当てはまります。

 

 質量を人間の能力に置き換えた場合、能力が上がれば衝撃力も上がりますが、残念ながら人間の能力にはそれほど大差はない。能力(質量)に差がないのなら、スピードを上げるしかありません。

 同じ量の仕事、あるいは、同じ能力であるならば、スピードが速ければ速いほど、相手に与えるインパクトは大きくなります。「インパクト(=影響力)=仕事量(アウトプット)×スピード(時間)」です。

「1週間後に100点の仕事を提出する」よりも、「70点でいいから、明日提出する」ほうが、相手に与える影響力は大きくなります。

 人間にとって、もっとも貴重な資源は、時間です。それなのに、「時間は有限な資源である」と認識している人がとても少ない気がしています。

 世の中のすべてのビジネスは、時間との競争です。だから僕は、スピードを重視しているマス。歴史上、衰退した国は、決して改革を怠っていたわけではありません。改革のスピードが市場(世界)のスピードより劣っていたがゆえに衰退していったのです。

 

 APUの西村啓一(学長室/課長補佐、秘書・社会連携)は、僕のスケジュールを、すべて30分刻みで管理しています。

「これまでの学長の打ち合わせや会議などは、『1件1時間』で組んでいましたが、出口さんから『1件あたりの打ち合わせなどは30分で十分だ』と申し出がありました。

 また、講演会などで出張も多い出口さんには、僕たち(秘書)が『指示書』というものを作成して渡して、現地で無駄なく行動してもらえるようにしています。指示書には、出張中の移動を伴う案件や講演会などの概要、会場場所への移動方法を地図などと一緒に記載しています。講演会や訪問先などへの到着時間は5分から10分前に設定してあり、事前の打ち合わせや、そこで落ち着いてお茶をいただく時間を省く代わりに他の予定を入れます。講演会先での電車経路は、会場にスムーズに移動するために乗車する車両や一番近い駅の出口を記載しています。また、出口さんは歩くスピードも速くて、階段も2段飛ばしで進みます(笑)。

 余談ですが、『指示書』はもともと、ライフネット生命時代の秘書の方が、一日に2、3件にわたる地方講演などの旅程をわかりやすく示したものだったようです。それを、ある日、出口さんが『指示書』と呼んで、『僕は秘書の指示通りしているだけだ』と、役職名は機能であると、メディアの方などにお話ししたことから、『指示書』という名前が定着したそうです。出口さんは、常に時間を効率的に最大限に使うことを実践しています」(西村啓一)

 

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著者紹介

出口治明(でぐち・はるあき)

立命館アジア太平洋大学(APU) 学長

1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業後、72年、日本生命保険相互会社に入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当したのち、大蔵省を担当して金融制度改革に取り組む。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て06年に退職。同年、ライフネット企画〔株〕を設立し、代表取締役社長に就任。08年、免許取得に伴いライフネット生命保険〔株〕に社名を変更。13年、代表取締役会長。17年に取締役を退き、18年1月、立命館アジア太平洋大学(APU)学長に就任。

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