THE21 » キャリア » 200万部突破!池上彰氏が語る『伝える力』誕生秘話&人気の理由

200万部突破!池上彰氏が語る『伝える力』誕生秘話&人気の理由

2019年04月03日 公開
2019年04月03日 更新

池上彰(ジャーナリスト)

記者時代の「上から目線」の失敗談


(写真撮影:宮下マキ)

――「こんなことも知らないの?」と、イライラすることはないのですか?

「実はこれについては、失敗談があるのです。NHKの記者時代の話ですが、文部省の記者クラブで一緒だった民放の若い女性記者から『池上さんは私が何か言うたびに「そんなことも知らないのか」って顔をされて、とても怖かったんです』と言われてしまったのです。
新聞社やNHKでは、当時の私も含め、中央の官公庁は地方勤務などを経たベテランが担当することが多かったのですが、民放では大学を出たばかりの若い人が配属されることもありました。当然ですが、取材力には大きな差があるわけです。
とはいえ、そんな顔をしていたとはまったく自覚していなかったので、とてもショックでした。自分はそんな上から目線でモノを言っていたのか、と……。

その後は『知らない』『わからない』という人に出会うと、『知らないっていうことを、私に教えてくれた。ありがたいことだ』と思うようになったのです。番組で芸能人のゲストがびっくりするような質問をしても『なるほど、そういう視点があるのか。教えてくれてありがとう』と、むしろ嬉しくなるのです」

 

とりあえず「周りに伝える」ことから始めてみよう

――自分の話がうまく伝わらないことに悩んでいる人は多いと思います。そんな人は、何から始めたらよいでしょうか。

「まずは、自分の家族などの身近な人に伝えてみることだと思います。自分が気づいたことや知らなかったことを、周りの人に積極的に話してみるのです。
大人はプライドがあるので、わからなくても『わからない』と言ってくれませんが、家族ならちゃんと『わからない』と言ってくれますよね。これが大事なのです。
自分の話のどこがわかりにくいのかは、自分ではなかなか気づけません。家族でなくてもいいので、正直に、あるいは辛辣にズケズケ言ってくれる人を見つけて指摘してもらう。それが伝える力を磨く近道です」

次のページ
優秀な記者ほど「雑談」をする? >

著者紹介

池上彰(いけがみあきら)

ジャーナリスト

1950年、長野県生まれ。慶應義塾大学卒業後、73年NHK入局。報道記者として、松江放送局、呉通信部を経て東京の報道局社会部へ。警視庁、気象庁、文部省、宮内庁などを担当。94年より11年間NHK『週刊こどもニュース』でお父さん役を務める。05年3月にNHKを退社し、現在はフリージャーナリストとして多方面で活躍。著書に『そうだったのか!現代史』(集英社)、『相手に「伝わる」話し方』(講談社現代新書)、『ニッポン、ほんとに格差社会?』(小学館)など多数。

THE21 購入

2024年5月号

THE21 2024年5月号

発売日:2024年04月06日
価格(税込):780円

関連記事

編集部のおすすめ

通販レジェンドの「伝わる」トーク術とは?

髙田 明(ジャパネットたかた創業者)
×