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健康を大きく左右する「ウェルビーイング度」の高め方

2019年07月02日 公開

西本真寛(はたらく人の健康づくり研究者)

 

WHOの「健康」の定義は実は曖昧!?

 組織行動論の研究者であるユタ大学のエリザベス・テニー助教授らは、2016年に発表した論文で、「ウェルビーイング(well-being)」が、企業の従業員の健康のみならず、人間関係や欠勤、自制心、モチベーション、創造性、離職率にも影響を与え、個人や組織のパフォーマンスと関連していることを示しました。

 

 

 つまり、毎日元気に仕事をするためには、「ウェルビーイング度」を高めることが大切だということです。

 では、ウェルビーイングとは何か。

 専門的な定義はまだ議論の続くところですが、「ストレスや怒り、悲しみが少ない」「楽しい、学びがあるなど、ポジティブな感情が頻繁に起こる」「仕事や生活への満足度が高い」といったことが、ウェルビーイング度が高い状態です。

 この言葉がよく知られるようになったのは、1948年に、WHO(世界保健機関)の憲章の前文で使われたことがきっかけです。そこでは、「健康とは、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、完全にウェルビーイングな状態である」と定義されました。

 ここでのウェルビーイングという言葉は、日本では「福祉」という言葉に訳されました。他の場面では「安寧」と訳されることも多いです。

 2005年から、世界最大の調査会社ギャラップは、毎年、世界約160カ国のウェルビーイング度を調査していますが、その報告書は、一般の人にわかりやすいように、「世界幸福度調査(World Happiness Report)」というタイトルになっています。ウェルビーイングを「幸福」と表現しているわけです。

 このように、ウェルビーイングという概念は、日本でも、英語圏でも、いまだ曖昧な状態です。

 一方、研究者たちが議論を重ねた結果、ウェルビーイングを測定する方法は洗練されてきています。

 

ウェルビーイング度を測る10の質問

 それは、「評価」と「体験」の二つの水準で測定するというものです。

 ポジティブな体験を多くしている人が、いつも自分の人生に対する評価もポジティブであるわけではありません。例えば、朝からずっと楽しかったデートでも、最後に喧嘩をして終われば、評価はネガティブになるものです。こうした背景で、評価と体験が分けて測定されています。

 昨年3月に、私も参加して、全国のビジネスパーソンを対象に行なった調査では、次の10項目の質問に回答してもらうことで、ウェルビーイング度(この調査では「バイタリティスコア」と呼んでいます)を測定しました。

 

(1)【睡眠】最近、睡眠状態はどうですか?
(2)【笑顔】最近、笑っていますか?
(3)【満足】最近、毎日の生活満足度は、どうですか?
(4)【夢中】最近、仕事で夢中になることはありますか?
(5)【思いやり】最近、職場で思いやりをもって接していますか?
(6)【人間関係】最近、職場や仕事の人間関係は、どうですか?
(7)【意義】最近、仕事のやりがいはありますか?
(8)【成長実感】最近、仕事で自分の成長実感はありますか?
(9)【責任達成】最近、仕事で自分の責任を果たせたと感じる機会はありますか?
(10)【主体性】最近、自ら仕事を創り出していると思いますか?

 

 回答は、6段階の選択肢から選んでもらう形にして、数値でスコアを出しました。

 項目のうち、(3)は満足度の評価を測定するもので、(1)や(2)などは生活の経験を測定するものです。

 こうして調査したバイタリティスコアと、同時に調査した生活習慣や職場の状況などの項目を分析した結果、バイタリティスコアに影響する興味深い要素が三つ見つかりました。

 

 

血糖値を一定にして昼間の眠気をコントロール

 一つ目は、睡眠です。

 これは、冒頭に挙げた「運動、栄養、休養」の中の休養に当たるもので、意外性は薄いかもしれません。

 ただ、バイタリティスコアが最も高かったのは平均8時間の睡眠を取っている人で、一般的に最低限必要とされる6時間の睡眠を取っている人よりも3%高いことがわかりました。

 睡眠時間は、個人で変えられることではありますが、生活習慣全体に関わることなので、いきなり変えるのはなかなか難しいかもしれません。

 そこで、まずは昼間の眠気のコントロールから始めることをお勧めします。

 眠気が生じるのは、食事によって血糖値が急上昇したあと、インスリンが分泌されて血糖値が急降下するときです。眠気を防ぐためには、血糖値をできるだけ一定に保つようにしましょう。

 朝食を欠かさないようにしたり、昼食を腹八分目にしたり、甘いものを控えたりするのもいいでしょう。

 また、週末に寝溜めをすると、月曜日から時差ボケの状態になって、水曜日までパフォーマンスが落ちてしまいます。

 週末も、起きる時間は平日と変えないようにして、寝足りなければ軽い昼寝で補うようにしてはいかがでしょうか。

 

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著者紹介

西本真寛(にしもと・まさひろ)

はたらく人の健康づくり研究者

東京大学客員研究員。組織における健康づくり(特にポジティブ・メンタルヘルス)を専門として研究。企業の健康経営に取り組みながら、ビジネスパーソン向けのヘルスケア・サービスの開発や企業の生産性向上のためのトレーニング、および、その開発を行なっている。これまで、経済産業省の健康経営オフィスレポートや都道府県の健康寿命研究、市町村の健康づくりの指針策定などに参画。東京大学大学院医学系研究科修了。

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